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第15話

嗚咽を漏らしたくなくて、俺は雅さんの胸に顔を埋めた。 どこか懐かしい甘い匂いに、体の隅々まで満たされていく。まるで自分が産まれたばかりの頃に戻っていくような…限りなく安らかな気分だった。 すっと、出来たばかりの和紙をそっと千切るような静かな眠気がいつの間にか俺を包み込んでいた。 「……可愛い仔じゃのう」 泣きながら眠ってしまった音羽の背中をゆっくりと叩いて、雅はふふと小さく笑った。 咲くべき場所を探して、荒野を歩き疲れていた。 直感で、そう感じた。音羽を見つけた時に。 人間にしては不純物の少ない、それでいて芯の強い子供に、まさか長く生きてきた爺が惹かれてしまうとは。自分もまだまだ青い。 すやすやと眠る音羽の顔をじっと覗き込む。たまらなく、愛しさが込み上げてくる。 「帰りたくなさそうだとは言ったが…帰したくないが本心だとは言い出しにくいのう」

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