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第16話

全く、困ったものだ。…久しぶりに、美しい宝物を見つけてしまえば、すぐ強欲になってしまう。 言葉巧みに音羽を騙したことを今更になって後悔するものの、さして雅の顔に動揺は現れない。 とりあえず、気になることはいくつかある。 それを少しずつ紐解いていきながら、音羽の意思を聞こう。 やや華奢な体を抱き抱えて立ち上がったその時、喧しい声が家中に響き渡った。 「おい雅!なんなんだこの匂いは!隠そうとしたって無駄だぜ、ぼんくら呪術師が!」 「やれやれ……五月蝿いのが真っ先に来おった」 溜め息をついているその間に、どたどたと廊下を突っ切ってくる足音とひとつの影。 すぱんっと襖を開けると、見慣れた顔が雅に大口を開けて叫んだ。 「雅てめぇ!俺に黙って人間隠してやがったな!!!」 金色の瞳に、銀色の髪と大きな狐の耳。 見目麗しいと、見た目だけならそう言えるのだが。 いかんせん、昔馴染みのこいつはやや気性が荒い。 「銀瑤(ぎんよう)、お主もう少し静かに来れぬものか。音羽が起きてしまうではないか」 「知るかよ。俺は飯食いに来ただけだっつの。それなのに、お前ん家の鳥居から人間の匂いがだだ漏れじゃねえか。普通にしてられっかよ」

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