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第17話

妖怪飯喰らいと呼んでやりたいのを堪え、鼻息の荒い銀瑤を宥める。 「ついさっき来たばかりじゃ。落ち着き次第お主にも話すつもりじゃった」 「はっ、そうかよ。にしてもこの(わっぱ)、お前によく懐いてるじゃねえの。どっから落ちてきた?」 間近で銀瑤の声が聞こえる距離にいても、音羽は目を覚まさない。それをいいことに、しげしげと観察する銀瑤。 「…恐らく、染井吉野じゃろうな」 先程問うた時、庭の桜の木にお供え物をしていて…と答えていたのを思い出す。 しかし、夢妖京の中で人間の世界に咲く染井吉野と言えば、たった一本しかない。 だとすれば、音羽は…。 「この童が、桜の神の末裔ってことか?んな偶然有り得るのかよ?」 「無い話ではないじゃろう。 普通の人間が夢妖京を目指そうと思おうが、邪念と煩悩に塗れておるから、まず無理じゃ。 音羽のように、神事に関わりのある家の子供には容易いかもしれぬぞ。 何しろ、音羽にそんな自覚これっぽっちもないのじゃから」

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