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第24話

双子の名前だろうか?雅さんは慣れたように、ふたりの小さな頭を撫でた。 ちりりんっと耳元の鈴が揺れて気持ちよさそうに目を細める顔は、すごく愛らしい。 ちょうど、喉を撫でてもらった猫みたいな…。 「あの…この子たちは?」 「この双子は雪娘と言ってな。儂の家に、氷を届けに来てくれるのじゃよ」 「あぁ、だから…」 気温が下がったように感じたのはそのせいか。 右側の…たぶん三十鈴の方が、白い布が掛けられた四角い小箱を両手で差し出してくれた。 「いつもの、氷」 「あ、ありがとう」 「番は、私たちの氷。初めて?」 「ばっ、ちょ…っ!だから俺は番じゃ…!!」 左側のたぶん六十鈴が、またもその単語を臆面もなく口にした。 焦って、隣の雅さんを見るとばっちり目が合った。すると、目尻を下げて蕩けるような目で見つめ返された。 「ふははっ!成程、番とはのう…いい気分になる呼ばれ方じゃの」 「み、雅さんんん!?」 すごい機嫌が良さそうに高笑いしてみせると、ぎゅっと俺の体を抱き寄せてきた。 心臓がばくばくと体中で響き渡る。 これ、このままだと本当に誤解される…!! 否定しなくちゃならないのに、不覚にも雅さんの匂いや温もりに酔ってしまって、脳みそが働かない…。 収集をつけられそうにない事態に陥ったそんな俺の頭に、目が覚めるような声が降り掛かった。 「おい!いつまで何してんだよ雅!あのお萩、いい加減俺に食わせやがれ!!」 「!」 雅さんに顔をすり寄せられながら、声のする方に目を向ける。やや長めの銀髪に、ふさふさとした耳と尻尾…狐の神様だろうか? 思案する俺の意を介さず、彼はあんぐりと口を開けて立ち止まった。 それから、家中の柱を薙ぎ倒すかと思う程の大声を上げた。 「雅てめぇえええ!!!!!」 …本当に、誤解されたままで良かったんだろうか…。

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