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第28話
やや苛付いた様子で言われて、ようやく事の重大さが身にしみてきた。
一方、雅さんはやれやれと前髪を搔き上げると、小さくため息をついた。
「帰りたくもない場所に、また無理して戻ることもなかろう。それに、満月までまだひと月あるのじゃ。
ゆっくり考えても良かろう」
「雅さん…」
優しく諭す言い方に、胸のあたりがほんわりと温もる。
雅さんと出逢ってからというものの、俺は自分でもやけに素直だと思う…それはきっと、良い事なのだ。
今までの俺には、考えられなかったけれど。
納得がいかなさそうに唇をきつく結んだ銀瑶さんに、雅さんは更に続けた。
「案ずるな、銀瑶。お主とて旧い神じゃろう。人間が人間の棲む世界で、最も幸せに生きて死んでいける訳ではない。
かつて、儂がそうだったようにな」
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