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第29話
ふっと、過去を懐かしむ瞳になってお茶を啜る。
意味深長な言葉がつい気になって、俺はつい雅さんをじっと見上げた。
すると、ん?とお茶を含みながらちょっと悪戯っぽく目配せされた。
屈託のないその目が可愛くて、俺は銀瑶さんの言葉があまり耳に入ってこない。
「…お前と童を一緒にするんじゃねぇよ。桜の神の末裔か何か知らねえけどよ。迷い込んできたのには違いねえじゃねえかよ。
って、聞いてんのかよ!!」
「銀瑶かわいそう」
すっかりお萩を食べ終えた三十鈴が、凪のない水面と同じくらい無表情のまま呟いた。
「…さて」
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