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第33話
和紙が全て、雅さんの手の中に戻る。
見惚れるほどに達筆な書だった。よく見ても、なんて書いているかは分かりかねる。
俺の頭を撫でながら、雅さんは続ける。
「悪いもんが寄らぬよう、"守り"を。
代わりに善いもんを連れてくるように、"使い"を。
このふたつを書に認めて、初めて呪術が成り立つのじゃよ」
「…そういう意味だったんですか」
じっと、和紙を見つめて雅さんの言葉を噛み砕く。
俺の知っているものよりも、もっとずっと高尚なんだろう。呪術というのは。
「認める書は呪術師が自ら導き出す。
習う師にも拠るじゃろうが、繊細な感覚と豊富な知識が必要な仕事じゃ。
手元が狂えば、間違って半端な術を掛けてしまう。一度掛かった術はまず、解くことはできぬからの」
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