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第34話
ふふ、とこっちが見て分かる程に、雅さんは機嫌よく微笑んだ。
「音羽には、とびっきりの"守り"と"使い"を掛けたからの。どうじゃ?良い気分じゃろう?」
「は、はい…!なんか、こう…視界がぱっと明るくなったというか。
体が軽くなって、むずむずするっていうか…」
あの不思議な感覚は、雅さんが俺に術を掛けた以外にほかならない。
癖になりそうな、心地いい気分だ…。
でも、と俺はつい口に出していた。
「どうして、俺にここまでしてくれるんですか…?
雅さんから見たら、俺はただの子供で…
こんな風に何もかもしてもらったら。
…俺、雅さんに、甘えてばっかりになりそうです」
出逢ってほんの少ししか経っていないのに。
お互いのことも、あまり知らないのに。
俺は、雅さんの傍を離れたいと思えない。
銀瑶さんに言われた言葉を忘れたわけじゃないのに。
こんなにも、雅さんが気になるのはどうしてだろう。
ゆったりとした微笑みのまま、俺の言葉を聞いていていた雅さんは、その手を顎に伸ばしてきた。
作り物にそうするように優しく触れると、ぐっと引き寄せられる。
「…儂はのう。音羽が可愛くて可愛くて堪らんのじゃよ。それこそ、誰にも渡したくないくらいに」
「…!」
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