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第35話
蕩けるような甘い香りが、雅さんの口元から香った。花の蜜を煮詰めたような、眩暈さえ感じる程の。
「……っ」
唇に、柔らかい感触が伝わった。
それが雅さんの唇だと気付いたのは、舌を絡ませられてからだった。
わずかに水音を立てて、舌を吸われる。
優しくて、それでいていやらしいと分かる口付けに…頭が考えることを投げ出す。
「んっ、んんぅ…」
足の爪先まで、力が抜ける。骨の髄まで溶けそうだ…。
膝から頽れかけた俺を、雅さんは抱き上げるように支えてくれた。
やっと終わったと思ったその時には、俺はどんな顔をしていたのだろう。
「お主が心の底から欲しいのじゃ。音羽、どうか儂のものになってはくれんかの?」
丁寧な口調とは裏腹に、その瞳は確実に俺を取り込んでいく。
「えっと…あの、え…?え?」
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