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第10話 シュークリーム[2]

こんな場所なのに、顧客管理はぬかりないようだ。証明書を添えて、こちらの素性も包み隠さず伝え、ようやく奥への入室を赦される。 …それにしても。こちらは次々と身に着けていた覆いを取っ払われるのに、男はマスクをずらす事もない。 …不公平だな。 初対面の男は、高い背もたれの重厚な椅子に掛けるよう勧め、小さなブランケットを膝元にフワリと掛けた。 「寒いでしょう?空調が効くまで暫くかかりますから」 穏やかな口調。他の音がないので支障ないが、注意して聞かないと聞き逃してしまいそうだ。 俺にだってこの後の展開はわかっている。引き結んだ唇を緩め、目を閉じる。 タイミングを見計らっていたのか、咥内に薄い皮膜で覆った指先が滑り込んできた。 想像だけでも嫌悪していた、ゴム特有のにおいはしなかった。

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