37 / 66

第13話 仙道さんのおつかい 1

 なんだか面白くない。  このところ、俺の住む独身寮の先輩 服部さんが、やたらと仙道さんを連れて行く。何故俺を通り越して2人で結託するんだ?  直属の上司は俺。仙道さんは 俺 の 部下!  勝手に指示出すな!!俺のなんだってばー!!!  チャーリーブラウンの友達、ライナスがどうしても手から離せないお気に入りの毛布は、他人から見たらボロだ。…なんて羨ましい。宝物は、その良さを知られすぎては敵を増やす基になる。  俺の人生初の部下、仙道さんは、誰の目から見ても魅力的過ぎて困る。凛とした佇まい。芸能人に居てもおかしくない華のある目鼻立ち。なのに、トゲトゲしていなくて、その育ちの良さが垣間見える。頭も良い。道案内も、通訳も、ちょっとした交渉事も、お手の物だ。  そんな分かり易くキラキラした人を公衆の面前に晒したら、どれだけの人を惹きつけて来るのか計り知れない。パーティションの上から隣の席を見遣るが、仙道さんの姿は無い。 「午後のプレゼンの打ち合わせ、できないじゃんか…」  頼み事を断っているところを見たことがない。いつでも聡明で、優し過ぎる仙道さん。もうこれ以上、顔を広めるのはやめにしてくれぇ!

ともだちにシェアしよう!