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第9話 X-day2.土井さんの愚痴
寮の後輩船山の年上部下、仙道さんを伴っていつものスナック「Venus」へやって来た。
聞けば仙道さんは俺と同い年。
育ちの良さそうなキラキラを撒き散らして居るから、店のコ達が代わる代わる隣に座りたがる。
でも、今日の俺はカッコよく呑める気がしないから、誰も座らせないようにママに言って、奥の席に替えてもらった。
二人で話す機会があまり無かったけど、この人は聞き上手だなぁ。ついつい思ってる事が零れ出す。
くやしい。今日みたいな上辺だけの肩透かしは許せない。
例えばそれが女なら。女ならやりかねない。
第一印象が大事だから、と白い粉で覆う。
唇に触れる瞬間を意識して存分にツヤツヤベタベタ盛る。香りまで計算して足してくる。
女子力とやらをひけらかしてやがって!白粉はたいて隠したいのは、醜いって自覚があるってことだろ!
素のままで勝負してみろよってんだ!
今日みたいなヤツは二度とゴメンだ。
見かけだけで選ばれて、開けてみればスッカスカなんだぜ!
騙された。
大手企業だからって図に乗りすぎだ。もうあの看板すら見たくない!
あー!思い切りdisったらすっきりした!!
…仙道さんには関係のない話なのに、付き合わせて悪いことしたな。
仙道さんも参加できる話題は…船山の事くらいしか無い。えーと、最近の船山はー…
「え…と、船山さ、この間デパートで見かけたんだけど、何してたんだろう…
地下食品フロアじゃあないんだよ、上の方に行ったの。神妙な顔しててさ。仙道さん、あいつなんか変わった事なかった?」
変な事聞いたつもりはなかったんだけど、向かいの席の仙道さんが明らかに動揺してフリーズした。
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