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第3話

郊外の一角でタクシーは停まり、東郷は金を払うと何の変哲もないマンションへと入っていく。慌てて車から降りた高坂は東郷の高い上背を追いかけ、狭いエレベーターへと乗り込む。 「堂々としたストーカーもいたもんだな」 真ん中のあたりの5階のボタンを押して、閉まる扉と緊張感でピリピリとしている高坂を見やる。 「名前は?仲間と行動はしないのか」 静かに問いかけられて、高坂は眉をあげて相手を見返す。ヤクザにしてはそういった雰囲気をまるで彼はもっていない。隙のない身のこなしは圧倒するようなオーラを感じるが、裏社会の臭さではない。 「名前など必要ですか。折角、招待してくれるというのですからご好意に甘えますよ」 高坂は虚勢で嘯くも、まあそうだなと納得したような表情を浮かべられて戸惑う。 エレベーターが停まり、すぐ前の扉にカードキーを差し込んで、ロックを外すと東郷はチラと高坂を振り返り、 「寒いから中に入ればいい」 「俺は尾行してるんで。それはオカシイでしょ」 「でも、君みたいなデカイ男がここにいたら、近所の住民に迷惑をかけてしまうからね」 ゆったりとした口調で肩を掴まれると、高坂は思わず中に入ってしまう。 ここで殺されて足がつかないようにすることなど、彼には容易いだろう。隙を作らぬように、警戒しながら玄関へ入ると、質素で生活感もあまり感じない部屋で目を疑う。 勝手な思い込みでヤクザのNo.2にでもなれば、もっと豪華な家にいると考えていた。 いや、ここは東郷の別荘かもしれない。 「まだ、冬ではないにしろ、外で張ってたら風邪を引くだろ」 「.....それが仕事、ですから」 まあ、中に乗り込めたのは棚からぼたもちなのだろう。周りを見回して出されたスリッパを履いて中に入るがガランとテーブルがあるくらいで何も無い。 コートとスーツを脱いでシャツだけになると、丁寧にハンガーにかけ、東郷は高坂にもハンガーを手渡す。 「酒、飲みかけだったか。用意しようか」 「いくらなんでも、それもオカシイでしょう」 思わず身構えながら、東郷を見返すと唇だけで笑われて、 「確かに、酒に何かを仕込まれないとは限らないな。いい判断だね」 意味ありげに告げてグラスを差し出すと、好きに水道水でも飲めばいいと伝えて、近くの椅子に腰を降ろす。 「実際、信用しろともいう気はないからね」

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