4 / 11
第4話
まるで家探ししても構わないというように、高坂をひとりにして浴室へと向かう東郷の様子に、高坂は呆れたように部屋の中を見回す。
きちんと整えられた部屋は男の一人暮らしには見えない。整然としたデスク周りには、こ難しそうな経営に関する本が並んでいる。
実際に桜星会は東郷が舵取りをするようになって、組の収入はかなり上がっている。しかも稼ぎ方もいたって合法なので引っ張るわけにはいかない。
尻尾をつかもうと上が躍起になっているのは、ココ最近の話ではない。
「探しても何も出ないよ。俺はただの組長のボディーガードなんでね」
部屋の中をうろつく高坂に、シャワーを浴びてきたのか、濡れ髪を張り付かせてタオルを手にしながら東郷は声をかける。
殆ど感じなかった気配に高坂が驚き背後を振り返ると、グラスを片手にソファーに座る東郷が見える。
「あんな盛り場にいれば、絶対に取引きがあるかと思うだろう」
「取り調べかい?あれはプライベートだ。君にも独り身を慰めるくらいの自由はあるだろう」
いけないかなとからかうような口調で返して、グラスを傾ける。
「俺もさかりを過ぎたからな。2週に1度くらいのペースでしか行かないが。それにしても、ゲイバーに行く男の部屋にのこのこついてくるとか、君は面白いね」
喉の奥で笑い、怖くないのかと問いかける表情には好奇心が見え隠れする。
暴力団の一員という肩書きにばかり気をとられていたが、あのようなところに出入りしている男である。
高坂は、背筋を冷や汗のようなものがぞくりと這い上がる感覚を覚えて身構える。
「そう分かりやすく警戒するなよ.....傷つくからね。すぐにとって食いやしないよ。俺だって、別に元々男が好きなわけじゃあない」
クイッとグラスを呷るとテーブルの上にそれを置いて、高坂へと近寄る。
近寄った東郷から、洗いたてのシャンプーの香りが漂い、高坂は思わず身を引く。
「実際、子供は守備範囲外だからな」
頬に触れる節ばった指先に、高坂は目を見開き面白がる様子の東郷の腕を掴んで払う。
「27だ。ガキじゃねえ」
「どうかな」
挑発するように近寄る表情に、高坂は思わず襟首へと腕を伸ばして掴みかかる。
それが彼の手口なのか伸ばされた腕に手をかけて、顔を近づけると、引き寄せるかのようにして頭を傾けてゆっくりと唇を重ねた。
ともだちにシェアしよう!

