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香の参

 天井は紅の下地に黄金の鳳凰が描かれていた。    孝彦が着替えをすると言い部屋を出てから、数分が経っていた。    僕は落ち着かず、部屋をうろうろとしていた。すると引き戸が開き、和服姿の孝彦が入ってきた。  孝彦は上座に一礼すると、提げてきた取っ手つきの桐の箱を静かに置き、箱の前に正座をした。 僕も静かに座りなおし、孝彦の動作を見守った。  赤く燃えた炭が仕込まれた香炉を手に取り、灰を整えて、小さな木片を銀葉に乗せた。  「聞香、だね?」  孝彦に尋ねたが、孝彦はそれには応えずに香炉を静かに僕の面前へと差し出した。  甘くて上品な香り。三度深く静かに吸い込むと、僕は孝彦に香炉を戻した。  沈香の中でも最高級の香木、『伽羅』に違いない。あの時感じた、伽羅の香を聞いた僕は間違いなかったのだ。  とてつもなく興奮した。  「脱いでください」  孝彦が静かに言った。  「え?」  僕が戸惑っていると、孝彦は立ち上がり、僕からジャケットを剥いだ。ジャケット、汗ばんだシャツ、スラックス。僕はたちまち下着一枚となった。  「磐田さん、あなたに香りを着用させます、全てを脱ぎ、身を清めてください」  孝彦に言われるがまま、孝彦が差し出した清め木綿の布で、体を拭いた。下着も取り、体の隅々を拭き清めた。  「驚かれたと思いますが、香着を纏っている方としか本音は語り合えないのです。申しわけありませんが、僕の言うとおりにして下さい」    孝彦は一礼すると、一糸纏わぬ僕の肌に香りを擦りつけ始めた。    孝彦の美しい手の平で、一度香りを蓄え、そして僕の肌に丁寧に擦りつけた。首から胸、背中が終わり、孝彦は黙って僕の正面に座った。  「磐田さん、両足を広げて仰向けになってください」  僕は、心臓が飛び出る思いだった。美しい人、孝彦、彼は男性である。僕は男性の前でこのような気持ちを体験したことが無い。心が震える。  僕は静かに横たわり、両足を広げた。  天井の鳳凰が鮮やかに見える。  孝彦は、僕の両足の指から静かに撫で始めた。静かに、香りを僕に着せていた。  両手、両足が終わったところで孝彦は僕を静かに見た。  目が合って、僕は高揚した。  孝彦は僕の陰嚢の右手で掴み上げた。僕は全身が強張った。  陰嚢をぐっと上げてあらわになった会陰にゆっくりと香を着せた。そして僕の会陰を強く深く押したのだ。  その時、体中に稲妻が走ったようになり、僕の陰茎はすっかりと奮立ってしまった。  「ようやく勃起していただけましたね、案外時間を要しました」  孝彦は無表情でささやいた。  孝彦は両手で僕の陰嚢を広げたり縮めたりして、そのうち、おもむろに口にふくみ始めた。  孝彦の美しい唇が大きく開いて、僕の陰嚢を吸い込んだり吐き出したりしながら、口の中で転がすようにしていた。  孝彦はゆっくりと両手の親指を使って、僕の会陰や肛門周囲を揉みしごいた。  僕は体を起こし、哀願した。  「孝彦くん、キスしてもいいかな」  孝彦は無表情でこちらを見るばかりで、応えることは無かった。  勃起した竿の先からはポタポタと先行汁が流れ落ちる。  孝彦は顔色ひとつ変えることなく、美しいまなざしをこちらに向けている。  そして、ゆっくりとこちらを見ながら、孝彦は自らの中指をゆっくりと舐めた。唾液をしっかりと絡め、その中指を、強く、僕の肛門内部へと押し込めた。  押し込めながらゆっくりと回転させる。  痛みが先だった。強い痛みが肛門に走る。便意のようなものを感じ、いきみたくなる。しかし、孝彦はその中指を細かく回転させ、少しずつ肛門内の分泌液を促そうとしていた。  そして次の瞬間であった。中指をぐりぐりと回転させながら、孝彦は僕の乳首を弄り始める。縦に横にと舐め回す。その美しい顔で、長い舌で、何度も執拗に舐め回すのだ。  その瞬間、反り立つ僕の陰茎は最も固く敏感にな状態になった。  僕は身を翻し、孝彦の指を肛門から剥ぎ取り、彼の細い腕を抑えて帯を毟り取った。キスをして、孝彦の右と左の乳首を両方同時に摘まみ、ひねった。ひねりながら、孝彦の舌を吸い続けた。  孝彦から伽羅の香りが聞こえる。  

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