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ピロトーク:運命の出逢い⑥はじめての共同作業
善は急げということで、僕はお泊り道具を手に、郁也さんの家に行くことになった。
「晩ご飯、何が食べたい?」
「ん~、安易かもしれないけど、カレーかなぁ」
「分った。じゃあ帰り道で、買い物していこう」
ふたり並んで、近所のスーパーでお買い物。真剣な顔をして、野菜を手に取る郁也さんを、じっと見つめてしまった。
やっぱり格好いいな。その手にしてる、ニンジンになりたいかも。
ぼんやりとそんなことを、考えているとき――
「お前、普段の食事は、どうしてるんだ?」
「えっと、お腹がすいたら冷蔵庫に入ってる、スポーツ飲料で、お腹を満たしちゃう、みたいな」
唐突に投げられた質問に、言ったら絶対にドン引きされるだろうなぁと考えながら答えた。
「はぁ!?」
「他にもちゃんと、カロリーメイトみたいなので、栄養を摂ってますよ」
慌てて付け加えると、呆れた顔をして僕の顔を見つめる。
「それって正直、食事じゃねぇよ。どうりで顔色が悪いはずだ。まったく――」
だけど口調はえらく優しいもので、責めている感じが、まったくしなかった。
「野菜で嫌いなもの、あったりするか?」
「基本、好き嫌いはないです」
「そっか、良かった。じゃあ今夜のカレーは、野菜をたくさん使った、栄養価の高いものにするからな」
ふわりと柔らかい笑みを浮かべ、僕の頬をそっと撫でる。それだけでもう、どんな顔していいのか、分らなくなってしまった。
「郁也さん……」
「ん~?」
「有難うございます。何から何まで、お世話をかけてしまって」
恥ずかしくて顔を上げられなかったけど、きちんとお礼を伝えなければと思った。
「これは俺のエゴだからな。好きなヤツの世話をして、喜ぶ顔が見たいだけだから」
「僕、郁也さんのそういうトコ、大好きです」
「ぶっ!//// お前っていきなり、直球投げつけるのな。心臓がいくつあっても足りないよ」
苦笑いを浮かべ、ガラガラとカートを押し、誤魔化すように咳払いをする。
さっきのは、直球だと思えないんだけどな。安易過ぎる、ベタな言葉だと思うんだけど。
「家に着いたら、お前も料理作るの手伝うんだぞ。一緒に作れば、美味しさが倍になるから」
嬉しそうに言う郁也さんに、ふたつ返事をして、並んで買い物を楽しんだのだった。
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