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ピロトーク:運命の出逢い⑦はじめての共同作業
真剣な顔をしてジャガイモを手にし、ピーラー片手に、ちまちまと皮を剥く涼一。隣で肉を切りながら、可愛いなぁと思わず眺めてしまった。
「う~ん。郁也さんみたく、大きく剥けないや。角度が悪いのかなぁ?」
「ほら、こうやるんだ」
後ろに回りこみ、涼一の両手を取って、ゆっくりとやって見せた。
「わっ、すごいや郁也さん!」
ジャガイモの皮が大きく剥けたくらいで、大はしゃぎする涼一に声を立てて笑ったら、振り向いて唇を尖らせる。
「笑わないでくださいよ、嬉しかったのに」
「そんな怒るなって、な?」
尖らせたままの唇に目掛けて、ちゅっとキスをした。
「んっ////」
ジャガイモとピーラーを手にして動けない涼一を、後ろからぎゅっと抱きしめ、そのまま深いキスに移行してやる。
「ん~~っ、んんっ、ん~!」
何か文句を言ってるらしいが、華麗に無視させてもらうぞ。今まで触れられなかった分、思いきってやってやる!
吸い上げるように舌を絡ませて、翻弄しようと試みた。次の瞬間――
がんっ!!
「痛っ!?」
涼一が俺の足の甲を、思いっきり踏みつけ反撃、あまりの痛さに仰け反るしかない。
「んもぅ! 真面目に作業してるんだから、邪魔しないでよ」
「ご、ごめん。つい、な……」
怒られているのに、何を言われても楽しい――楽しいのだが容赦のない涼一が、ちょっぴり怖いかも……
「僕はちゃんと気持ちの整理が出来ているし、逃げも隠れもしないから。いきなり襲うことしないでください」
「ああ、分った」
「味見は、カレーだけで充分なんだ。あとから好きなだけ、僕のことを食べればいいんだから」
言いながら再び、ジャガイモの皮をむき始めた涼一なのだが――コイツ、自分がすごいことを言ってる自覚、あるんだろうか? 俺、本当に好きなだけ、お前を食べまくっちゃうぞ。
ソレを考えただけで、身体の一部が異常に熱を持ち、困ったことになってしまった。涼一、どうしてくれるんだ?
「真っ赤な顔してないで、さっさとお肉切らないと、夕ご飯間に合わなくなるよ。大丈夫、郁也さん?」
調理実行者である俺に、ため口で偉そうに指示する涼一。
何だか――これからの関係を、示しているような気がするのは、自分だけなんだろうか?
しかも気持ちの整理がついてると言いつつ、どうしてそんなに、落ち着いていられるんだ? 俺としては、目の前にぶら下がったニンジンに、ハァハァしちゃう馬の気持ちなのに。
「こんな風に料理したのって、中学校以来だなぁ。すっごく気分転換になるんだね」
無邪気に笑いかけてくれるその笑顔に、これ以上の手出しは無用だよ。なぁんていう無言の圧力を、ひしひしと感じてしまった。
可愛い顔して結構やり手だぞ、まいったな――
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