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ピロトーク:久しぶりに重なる肌(郁也目線)
「あー……いつの間にか、寝ちゃってたのか」
左手は涼一が握りしめ、幸せそうな顔して寝ていたので、右手で枕元に置いてある、時計を引き寄せる。
――午後4時過ぎ、か。普段の疲れもあっただろうが、久しぶりに肌を重ねることが出来た故に、無駄に頑張ってしまった。
「何てったって浮気してないって証拠、これでもかと、見せつけなきゃならなかったもんな」
枕元に時計を戻し布団に入り直すと、肩口に頬をすりりと寄せてくる。
「んっ…郁也さん、大好き……」
他にも何かブツブツ呟いて、微笑みながら眠り続ける涼一。
「寝ながら、俺を翻弄するんじゃねぇよ、まったく////」
涼一から発せられる、愛の言葉に相変わらずテレてしまい、頬が赤くなってしまう自分。いつになったら慣れるんだろうか。
普段は冷たいクセに無防備でいる俺に対して、絶妙なタイミングで投げつけてくる言葉の数々――
「そのたびに赤面して、どう返していいか、分からなくなっちまうんだよな……」
いや……感謝の言葉や愛の言葉を、素直に言ってやればいいだけなのだが。気の利いた言葉を言ってる自分を、もうひとりの自分が見ていて、何をカッコつけてるんだ!
なぁんて批判するから、余計に言えなくなる。
「バカみたいだ、ホント……」
「誰がバカだって?」
その声に驚き横を見ると、寝ぼけ眼の涼一が俺の顔を、じっと見ているではないか。
「!!」
「僕の悪口、言ってたんでしょ。昼間っからあんなCD、大音量で流しやがってって」
寝ぼけているんだろうか? それとも文句が言いたくて、ケンカをわざわざ吹っかけてきているのか?
コイツのツンデレ補正は、相変わらず見極められないな。
「涼一のことじゃない、俺自身のことだ」
「郁也さんのどこが、バカなのさ?」
責めるような口調なのに、相変わらず眠そうな表情を崩さない。
――やっぱ寝ぼけてる?
「俺はもっとお前に思ってることを、積極的に言ったほうがいいのかなって。どんな言葉を言ってほしい、涼一?」
「さっき聴いてた、ドラマCDみたいなヤツ」
「ぶっ!? ////」
いきなりの即答に、投げられる難題!
ちなみに聴いていたエロCDのピロトークは、もっと内容が甘いもので、二回戦ヤっちゃうぞって感じだったような――
「ヤることヤってるのに、どうしてそんなに顔、赤くさせる必要があるのさ?」
「やや、やっぱ、いろいろとテレるだろ。気持ちが、その……」
「あ~そぅ。心と身体は、別物って言いたいんだね」
寝ぼけ眼と見せかけて、じと目だったりするのか? 困り果てる俺に冷たくぷいっと背中を向けて、ふて寝してしまった。
――まいったな。
ここは思いきって甘い言葉でも言わなきゃ、機嫌が直らないぞ、絶対に(汗)
何を言ったら、コイツは喜ぶであろうか。
思い出せ! 似たような場面があった恋愛小説を。どんなことをされて、そして言われて主人公の女のコが喜んでいたっけ?
――って、ストップ。そもそも涼一は男だろ。女のコが喜ぶことをして、同じように喜ぶんだろうか? 持っている感覚は女のコ寄りだけども、完全な女のコじゃないんだ。
……こ、これは。別ジャンルの小説を読んで、研究しろってことなのか!?
(こういうシチュは読者様に聴けば、いいアドバイスが貰えそうなw)
冷たく背中を向ける涼一に、わたわたして固まる郁也。そんなふたりを、生温かい目で見守る読者様の姿が、手に取るように分かる作者。
(ええぃ、ままよ!)
ガシッと後ろから涼一を、ぎゅっと抱きしめた郁也。
「あんなCDのセリフを、俺が言ったところで、お前は納得しないだろ。二番煎じになるのがオチだ」
「…………」
「気の利いた言葉を、言ってやれなくてゴメンな。好きすぎて、何を言っていいのか分からないんだ」
耳元で囁く声に、ただ俯いた涼一。やがて身体を反転させ、郁也の首に両腕を絡ませる。
「しょうがないな、許してあげるよ。郁也さんの気持ち、分かってしまったから」
口調は冷たいものなれど、顔を真っ赤にして言った可愛い恋人を、更にぎゅっと抱きしめた。
「こんな俺だけど、その……もっと好きになってもらえるように、一生懸命頑張るから。ヨロシク頼む////」
「ヨロシク頼むって、何を頼んでいるのやら」
似たようなセリフが、ドラマCDで流れたものであることを知らず、思いっきり使った郁也に苦笑いをしながら、そっとキスをした涼一であった。
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