35 / 87
ピロトーク:郁也さんの特技⑥
***
涼一とのHじゃないが、俺にも限界はある。気持ちの中では、まだまだイけると思っても、身体がいうことをきかない。
仕事でもアッチでも弾切れを起こさないよう、早めに周防のトコに赴くべく、手土産を涼一と作った。
「周防さんの病院に行くのに、注射の見返りが餃子って一体……」
「ニラとニンニクが大量に入ってるのが、これのミソなんだよ。名付けて桃瀬スペシャル。スタミナつくだろ?」
これを食べた太郎が、周防を襲ったりしてな。
餃子の皮に水をつけタネを載せて、俺に手渡してくれる。しかし涼一の目が、何故か冷たい――
「どうした?」
「郁也さんの考えてることが、手に取るように分かるから。太郎くんと周防さんがイチャコラするのを、想像してるんでしょ」
「相変わらずすげぇな。どうして分ったんだ?」
手渡された餃子をキレイに包んで、皿に載せた。
「手土産に餃子って変だもん。無茶苦茶にニンニク入れてるあたり、何かあるなぁって思ったんだ」
「あの量は、いつも通りだぞ」
「だとしてもあのふたりのことは、自然に任せたほうがいいんだって。スタミナつけるのは、郁也さんひとりで充分」
涼一の言葉に、思わず笑みを浮かべてしまう。
「それって俺に何かをやらせたいから、そんなこと言ってるのか?」
しまった(´゚∀゚`;)
そんな感じの言葉を、あからさまに顔に出した。
「たまには違うトコで、ヤるのもいいかもな。キッチンプ――」
「ふざけたこと言ってないで、ちゃんと餃子包んでよ。それにこんな場所では、絶対にしないからね」
ズバッと釘を刺され、呆気なく撃沈した俺。
まぁ今日は珍しく早起きして、行ってらっしゃいのキスをわざわざしてくれたから、いいか。
涼一から元気をチャージしてもらい、お陰で一日ご機嫌でいられたし。
その場面を思い出し、しみじみと幸せを感じている俺を困った人だなぁと呟いて、寄り添ってきた身体を、ぎゅっと抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!