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ピロトーク:揺れる想い⑤
こんな風に泣くヤツじゃないのに、それだけ辛い想いをしているんだろう。
「いつもタイミングの悪い、手遅れな恋ばかりして……」
――手遅れな恋――
俺にも太郎にも、そんな恋をしてしまった周防。何か声をかけてやりたいのに、またしても上手く言葉が出てこない。
「手遅れなんかじゃない! まだ、はじまってもいないじゃないか!!」
「……涼一くん?」
涼一が珍しく声を荒げて、周防に言い放った。
「太郎くんのことが、好きなんでしょ? こんな簡単に、諦めていいの?」
「だってアイツの本名も何もかも、知らないことだらけんだ。それに――」
俺は周防を助けたい、大事な親友だから。
「らしくないぞ周防。お前もっと、ガッツがあるヤツだったのによ」
「しょうがないでしょ。恋は誰だって、臆病になるものだよ」
苦笑いして言うヤツの背中を、思いっきり叩いてやる。
(☆_@;)☆ \(`-´メ)俺からの気合注入だ!
「いたっ!」
「何のための、親友なんだよ俺は! お前が病気の俺を助けてくれたように、俺だってお前を助けたいんだ!」
「桃瀬……」
俺たちのやり取りを、涼一は柔らかく微笑みながら、見守ってくれた。
そして――
「あのね太郎くんのこと、分かる範囲でいいから、教えてほしいです。確か僕が通っていた学校の、高等部に在籍しているんですよね?」
もしかして、涼一のヤツ……
「うん、同じ制服着ていたから。ネクタイは青色だった」
「じゃあ学年は三年生だ。他に何かありませんか?」
ポケットからスマホを取り出して、サクサクとメモを取る。
「もしかして、捜してくれようとしてる? だけど本当に、アイツの情報がないんだ」
「この若さで死にそうな病気って、すごく手がかりになりそうな気がするんだけど、教えてもらっちゃダメですか?」
「知ったところで
個人情報になるからね。病院が簡単に、教えるワケないと思うよ」
「とある人に頼んで、調べてもらったらきっと、全部調べつくして、教えてくれると思うんです」
とある人――涼一は笑いながら俺の袖を引っ張って、とある人をアピールした。ソイツの笑った顔が頭に浮かび、途端にイヤぁな気分になる。
「あー、アイツに頼むのか。それは間違いなく、捜し当てるだろうな」
正直、頼みたくないが周防のためなら、ガマンするしかない。
ちっ (ーー;)
「僕らの知り合いに捜すのが、上手な人がいるんです。だから教えてください」
「でも……」
「郁也さんも僕も周防さんの恋を、手遅れなんかにしたくないって思ってるんです」
涼一の言葉に首を縦に振って、同意してやる。だって幸せになってほしいから。
「それじゃあ臆病な周防に、追いかける理由を、俺からつけてやるよ」
親友として、俺が出来ること。
「何それ?」
「一応太郎は、お前の患者だったんだ。その後、病気がどうなったか医者として、知りたくないか?」
「まぁ、気になるけど」
恋に臆病になってるお前の背中を、親友である俺が、全力で押してやるよ。
「なら、それを確認するのに、追いかけたことにすればいいだろ。あとはお互い想い合っていれば、なるようになるんだよな?」
涼一に向かって結果論を言うと、体当たりしてくれて嬉しそうに、そうだねと肯定してくれた。
「そういうことだ。太郎の居場所が分かったら、ちゃんとどうなってるか、確認しに行けよな」
「僕らも太郎くんのこと心配ですから、病気のこと教えてください」
俺たちの気持ちが伝わったのか、涙を拭いながら、今まであったことと病気のことについて、詳しく話をする周防。
「軽井沢に別荘を持っている、絵が上手な高校三年生で、自然気胸と甲状腺癌を患っているんだね」
周防が話してる最中、ちゃっかり似顔絵を頑張って描いてやった。これが少しでも、手がかりになればいいのだが。
「ついでに、この似顔絵も添付してやってくれ。役に立つから」
「郁也さん、似顔絵が描けるなんてすごいね。どれどれ――」
自信満々に、涼一にメモ帳を手渡した。
「身長は185センチくらい、髪はボサボサで、顔は適度に整っていたぞ」
目をつぶって、思い出しながら言ってやる。
「整っていないよ。むしろ、サル顔だったって」
「そうか? でも内に秘めたワイルドさを演出すべくそんな感じを、この絵で表現してみたぞ」
盛り上がる俺らに反比例して、涼一が何故かメモ帳を片手に、カチーンと固まっていた。
|||(-_-;)||||||どよ~ん
「どうした涼一、早くヤツに送ってやれよ」
「えっ!? あ、うん……」
(>_<。)えいっ!
恐々といった顔して送信した涼一を、周防は微妙な表情を浮かべ、じっと眺めている。
――何か俺、やらかしたんだろうか?
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