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郁也さんの誕生日(表紙絵参照)
仕事から帰るなり押し付けるように手渡された、郁也さん愛用のスケッチブック。
(/||| ̄▽)/ゲッ!!!
正直見たくないとは言えず、渋々中身を見た。自画像が欲しいと強請ったのは僕自身だからね。
「うっ!? え~~っと……」
言葉に詰まった理由は、スンゲェ──―Σ(゚∀゚ノ)ノ─―─ッ! 絵のせいもあるけど、書かれている文字。
――すでに祝ってもらえると考えて、お礼まで書かれているなんて……
僕は心の中でコッソリと白旗をあげた。
大好きな郁也さんのことは僕なりに調べ上げているというのに、このアピール具合には失笑するしかない。
まずは、どこから突撃すべきか――
キョロ キョロ (。_。 ) ( 。_。)
「郁也さん、どうして頭にももたろうが生えてるの?」
一番大きくて、目が奪われたモノから指摘してみた。すると嬉しそうな表情を浮かべ、それを指差す。
「これは、俺が好きなマスコットなんだ。だけど男の俺がこんなのつけていたら恥ずかしいし、堂々とカバンにつけられないだろ」
「……確かにね。だからって頭につけることなぃ……」
「何だって?」
「いやいや! 次いってみよう。えっと――」
もう多くを語れないよ(ノД`)シクシク
「郁也さん、本当にマヨネーズ好きだよね。カバンの中に、小さいのを忍ばせてるのを知ってるよ」
「マジでか! いつの間に」
「ええっと、この間買物したときに買ってるのを見たから。帰って来たらニヤニヤしながら、カバンに入れてたじゃないか」
郁也さん専用ウォッチの、僕の目から逃れられないんだぞ。
言いながらへへんと胸を張ったら、くっくっくと意味深に笑う。正直ちょっといただけない笑い方に見えるのは、僕の気のせいってことにしておこう。
「よく見てるのな。さては俺のストーカーか?」
誕生日プレゼントは何がいいだろうかと僕なりに考えていた。郁也さんが今、必要としてるものは何だろうなぁって。
「あとね、この着てるTシャツ。どうして消しゴムが書いてあるのか、あえてツッコミをいれてみる」
「ああ、それなぁ。あえて語ると某所からのツッコミが入りそうだから、語らない方向でヨロシク」
「分かったよ。郁也さんお誕生日おめでとうございます!」
(*´∀`)o∠☆゚+。*゚PAN!!★゚+。*゚
僕は隠し持っていたクラッカーを、郁也さんに目掛けて紐を引いた。
カラフルな紙吹雪を頭から浴びながら呆気にとられる顔を見やり、金色に光り輝く紙製のハットを被せてあげた。
『今日の主役は俺様だ!』
なぁんてプリントされているもの。一緒にタスキも掛けてあげてから椅子に座らせた。
「お、おい……これは一体?」
目の前のテーブルに並べられているのは、僕が丹精込めて作ったカレー。料理が下手な自分でも美味しく作れるであろうカレーなら、郁也さんも安心して食べることができるだろうと頑張って作ってみた。
「一生懸命に愛情を込めて作ってみました。玉ねぎなんて、飴色になるまで炒めたんだよ。たくさん作ったから食べてね」
「うれしすぎるっ! 涼一が俺のために……。じーん」
郁也さんは大げさに涙を浮かべながらいそいそとスプーンを握りしめ、カレーだけをすくうと、それをまじまじと観察しだした。
「うおっ! にんじんがハート型にくりぬかれているっ! まさに愛情がこもっているじゃないか」
(いちいち感動しすぎだよ。早く食べて、率直な感想を言ってほしいのに……)
少々呆れ顔してる僕に気がついてコホンと咳払いをし、何事もなかったように口にした。
「ヾ(@⌒¬⌒@)ノ ウマヒィ何杯でもいけそうだ、ありがとな涼一」
「どういたしまして。喜んでもらえて良かったよ」
ホッと肩を撫で下ろすと、ニヤリと含み笑いをする。何だろ、郁也さんの笑みの意味するところは……
「メインディッシュは、ベッドの中で戴いてもいいんだよな?」
この人、こういうことは平気で言えるクセに、自分の気持ちをなかなか言えない不器用なところがアンバランスすぎて、ついていけないんだよな。
「僕は食べ物じゃありません」
「マヨネーズは飲み物だぞ」
ああ、もぅ┬|ョ゚д゚`)。oO(意味不明) 誰か郁也さんを、しっかりと矯正してくれないだろうか。
ガックリとした僕だったけど、郁也さんの誕生日だったので断るワケにもツッコミをいれるワケにもいかず、仕方なく食されたとさ。
めでたし めでたし。
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