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第7話

「(なんか温かい……)」 薄く目を開けば、目の前には龍生の端正な顔があった。 僕と龍生は、まるで抱きしめ合うような形で、向かい合っていた。 「ーーッ!?」 声にならない驚きが心を満たし、眠っていた頭が急速に回転をし始める。 「(そうだ……僕、昨日……)」 告白、したんだった。 龍生の言葉に胸が詰まって、どうしようもなくなって。 気付いたら気持ちを、想いを全部吐き出していた。 その事実を再認識し、かぁっと顔が火照る。 「(いやいやでも……答えを貰う前に気付いたら眠ってたし……でもダメならこんな、こんな一緒になんて寝ない……か?)」 けど、でも、とぐるぐると頭を疑問符が巡る。 なんとか整理しようとするも、思考が追い付かず。 そうこうしているうちに、隣でクスクスと笑う声がした。 「た、龍生……!」 「お目覚めですか、若様」 寝起きの、妙に色気のある未だ微睡みの中にある瞳と掠れた声に心臓が跳ねる。 「お、はよう……」 「おはようございます。よく眠れましたか?」 「あ……ああ、えっとお陰様で……?」 「…………昨日はあんなに熱烈な告白をして頂いたのに、何故そんなに逃げるんですか」 挨拶と同時、海老のように壁まで後退りした僕に苦笑しながら起き上がる龍生。 「え、と……その」 「若……いや、螢様」 「は、はい?」 普段と違う呼ばれ方に思わず敬語で返してしまう。 そんな僕に、彼はまた笑みを浮かべてすぅっと手を伸ばしてきた。 その手は頬に触れ、耳を掠り、髪の中へ進入する。 そのまま後頭部に手が回り、もう片方の手で反対側の壁を塞がれた。 「…………ッたつ、き」 その一挙一動に反応してしまう僕を目を細めて見つめた龍生はそっと顔を近づけーー 「…………今日はここまでにしましょうね」 ニッと笑ってそう囁いた。 「(……危なかった)」 約束通り、朝イチで迎えに来てくれたリオと入れ替わりで執事室へ戻った俺は、シャワーを浴び、着替えながら先ほどまでの彼を思い出す。 若君があんなに可愛らしい一面を見せるなんて。 いや、今までも可愛らしさを感じることはあったけれど。 それはどちらかといえば、親心に近いもので。 まさか干支が二周りも違う、しかも赤ん坊の頃から見てきた若君に恋愛感情を抱くなんて思わなかった。 顔を近づけた時の照れと期待。 朝じゃなければ、司様が過らなければ。 自制が利かなかったかもしれない。 固まる彼の表情を思い起こし、思わず顔がにやけてしまう。 「オジサンがニヤニヤしてると厭らしいですよ」 「! ……リオ、お前着替え中にいきなり入ってくるなよ」 驚くだろ、と振り返っていうと、いつになく真面目な顔で、すみませんと謝った。 「一応、ノックはしたんですが」 そして、何となくではあったが、予想していた言葉を俺に告げる。 「司様が、お呼びです」 そう。もうひとつ。 クリアしなければいけない壁があるのだった。

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