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其処は-14-※
「止めろ!」
「私の精液を体内に残したまま帰国するつもりですか?」
「そんな事貴様に関係ないだろう!」
「ここで出しておかないと知人の前で醜態を晒す事になるかも知れませんよ?」
「そんな事どうでもいい!!」
閉じる事の出来ない脚を必死に動かすが、魔物は難なく脚の間に身体を割り込ませた。
「半年の間何度となくお世話したじゃありませんか。今更でしょう?」
細く繊細な指先が精液を滴らせている陰部へと押し当てられ身体に慄《おのの》きが走った。
「止め・・・触るな・・・」
「先程も言いましたが、何も持たない者が人を動かすには請うしかありませんよ」
言われ、アークは息を呑んだ。
たかが言葉だ。
だが、一度請えば二度三度と請う事になる。
そうなれば簡単に誰振り構わず縋りつくようになるかもしれない。
冗談ではない!
「俺に触るな!」
断固たる意思を持って言い放った。
「本当に強情ですね」
濡れそぼった陰部へ指先が忍び入り、身体が大きく揺れた。
先程までの行為で解されたソコは抵抗無く二本の指を飲み込んだ。
熱く熟れた内壁は穿たれた指に吸い付くようにひくひくとわななき、そんな自らの動きに甘い疼きを感じる。
指が動かされたら。中で水の術式が展開されたら。それを考えると嫌な汗が噴出す。
「おぞましい。指を抜け!」
「そう言う割にはぎゅうぎゅうに締め付けていますよ」
「いいから抜け!!」
「そうですね。抜くために早く処置をしましょう」
否を唱える前に水の術式は展開された。
指とは異なるゆるい感覚に身を震わせていると二本の指が内壁を掻き乱しだした。
全身を大きく撓《しな》らせながらも声を漏らさぬように歯を食い縛り耐える。
だが、指が動かされる度に甘ったるい呻きが鼻から漏れ出てしまう。
耐えろ!
ほんの一時耐えれば終わる!
終わるんだ!!
襲い来る快楽を必死に耐えていると眼帯の魔物は微笑を深め、くすりと笑った。
「出したばかりだというのに元気ですね」
「ふぅんっ・・・」
「もう一度介抱しましょうか?」
内壁に与えられる淫靡な感覚に耐える事に必死アークには魔物の言葉は届かない。
問うだけ無駄だと判断した魔物は再び蜜を滴らせているソコへ舌を這わせた。
新たに加わった快楽に堪らず声を漏らし、身体を仰け反らせた。
意図してか魔物は卑猥な音を響かせながら性器を啜り上げ、陰部を掻き回す。
濡れ音を耳にし、より一層の興奮を覚えたアークは身体を振るわせた。
「そんなに締め付けていたら体液を掻き出せませんよ」
力を抜くよう促すため、性器から口を外されもどかしさと寂しさを覚える。
――刺激が欲しい。
――口でしごいて欲しい。
欲を駆り立てる影もなりを潜め、正気だと言うのにそんな欲望を抱いている自分を軽蔑するが思いが止められない。
いらぬ事を口にしてしまわないように自らの左腕を噛み、耐える。
その姿に何を望んでいるかを汲み取った魔物はアークの太股に添えていた左手の親指で花弁を押し開き、差し込んでいた二本の指を動かし中のものを掻き出していく。
ぐぶぐぶと卑猥な音と共に中の者が吐き出され、腰を浮かせガクガクと震えながらやり過ごしアークは胸を撫で下ろした。
――終わった。
前も後ろも刺激を欲し、甘く疼いている。
攻めて欲しいと訴えているが、腕を噛み、痛みで紛らわせる。
――早く指を抜いてくれ!
――そうすればこんな浅ましい事を望まなくてすむ!
ずるりと指が抜かれ、大きな息を吐く。
「さて、後ろの処理は済みましたので、今度は前ですね」
アークが言葉を発するよりも早く陰部に再び指が差し込まれた。
三本の指が。
先程に比べ増した圧迫感に身体を跳ね上がらせる。
「今度は前の介抱が目的ですから、遠慮なく感じて下さい」
そう言うと魔物は蜜を滴らせながらそそり立っているソコへ舌を這わせた。
裏筋を下から上へと丁寧に舐め上げられながら内壁を擦り上げられ、痺れるような旋律に堪らずに声を漏らす。
「はあぁん・・・」
刺激を強請るように腰が揺れるのを止める事が出来ない。
前後を容赦なく攻め立てられ堪らずに魔物の頭を鷲掴みにした。
自ら引き剥がそうとしてか、それとも魔物の喉奥深くに自身を沈めるためにか。
ぐちょぐちょと卑猥な音を響かせながら絶頂感に腰を突き出し、魔物の口内にありったけの欲を吐き出した。
絶頂の余韻にひくひくと震えていると魔物が身を起こしアークに見えるようにわざと喉を鳴らし、体液を飲んで見せた。
「一度出しているから濃さも量も少ないですね」
唇を艶かしく舐め上げながらの言葉に羞恥からアークは顔を背けた。
甲殻鎧《こうかくがい》の枷を消すが、微動だにしないアークに対し手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
払い除けられるか無視されると思っていた手を取られ、握られる。
力が込められた次の瞬間、勢い良く引っ張られ体制を崩すと左頬に拳が叩き込まれた。
身を起こし忌々しそうに睨みつけるアークとは対照的に魔物は妖艶な笑みを浮かべたまま口端の血を親指で拭った。
「酷いですね。私は貴方の望む事をしただけですのに」
「黙れ」
怒りを押し殺した低い声で凄むが魔物は意に介さない。
「前も後ろもすっきりしましたしこれで帰り支度が出来ますね」
行動を促すように両手を打ち鳴らすと魔物は身を翻しクローゼットへと向かった。
「戦闘と性行為で酷いありさまですからね。着替えましょう」
中から何かを手にし、振り返ると満面の笑顔で問うた。
「どちらがいいですか?」
右手には猫。左手には兎。
上と下が一体化し、動物の顔を模したフードが付いた着ぐるみが突きつけられアークは顔を引き攣らせ、思わず貴族にあるまじき言葉を吐いた。
「くたばれ」
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