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ココロ 4話

デカい中年男が2人で喫茶店は目立って嫌なので、薫が経営しているバーへと行く事にした。  「薫、相変わらず手広くやってんだな」 会員制のバーは雰囲気は悪くない。ただ、開店前なので薫自身が飲み物を作って出してくれた。  「真面目なお前は昼間っからアルコールは無理だろうからコーヒーだな」 「気使ってくれてありがとう…この前、灯が相談しに来たぞ」 豊川はコーヒーを受け取るとそう言った。  「灯が?俺の事か?」 「まあな、どうやったらお前が親族と上手くやっていくのかとか…色々だな」 「ケッ、誰が上手くやるかよ。」 薫は面倒くさそうに舌打ちする。  「お前の事心配してるんだぞ灯は」 「違うな、俺の事は口実。灯はお前が好きなんだよ」 「はっ?」 豊川はキョトンとなる。 「昔っからお前に憧れてたんだ。今の仕事もお前と絡みがあるからだよ。モテるよなタケルは年下に」 薫は意味ありげにニヤリと笑う。  何をニヤリと笑ったんだろう?と豊川は嫌な予感がした。  「随分と可愛い子猫飼ってるよな」 子猫…………?  あっ、まさか嘉樹?豊川はつい、ピクンと反応してしまった。 「子猫ちゃんがタケルの今の弱点か?」 ニヤニヤと笑う薫。 「何が言いたい?」 なるべく冷静を装う豊川。 「良いもん見せて貰ったからさ。手繋いだり、子猫ちゃんと濃厚キスとか」 …………くそ、 見られてたのか。  豊川は舌打ちしたい気持ちを押さえる。 「子猫ちゃん未成年じゃねえよな?」 「幼く見えるだけだ」 「そうか、もうヤッたんだろ?子猫ちゃんはバージンだったか?あんだけ可愛いならもう誰かにヤラれた後か?」 「薫、お前の用件ってソレか?」 豊川の声は低い。  「マジで子猫ちゃんが弱点なんだな。」 薫は確信したように微笑む。  「帰る」 豊川は不機嫌そうに立ち上がる。  「逃げるなよタケル」 薫は豊川の腕を掴む。 「座れよ」 「嫌だね」 「座らないと新崎にバラすぜ、お前の息子は親友に食われてるって」 その言葉に豊川は硬直した。  そこまで調べたのかコイツ…………。 冷静を装うとしても動揺してしまう。 嘉樹の記事には顔は写っていなかったのに。 どうやって調べた? 薫を睨むように見つめる。 「いいなあ。お前正直で。…俺と付き合っていた時にそんな所見たかったぜ」 ニヤニヤする薫。  「調べたのか?」 「調べたっていうより、灯が話してたんだよ。お前んとこに可愛い子が居てタケルとすげえ仲良さそうで羨ましいって」 灯?  嘉樹が光一の息子だって知ってたのか?  豊川はため息をつく。 「灯はお前と子猫ちゃんが付き合っているのは知らないみたいだから安心しろ」 「…薫、お前の用事って…」 豊川は立ったままで質問をする。  嘉樹の事で脅して何がしたい?  付き合ってた頃も薫はたまに豊川にも理解出来なかった。  「やり直さないか?」 「はい?」 予想外の言葉。  やはり薫は理解出来ない。  「ずっと…忘れられなかった」 薫は豊川の腕を強く掴んで椅子に座らせた。  近付いてきた薫の顔。  何言ってんだろう?  付き合っていたのは十代の頃なのに。  別れた後もたまに会うくらいで、お互い友人関係を続けてきたのに、今更?  ****** 「嘉樹、そろそろ起きないと夜眠れなくなるぞ」 横向きに眠るyoshiの肩を揺すると、 「…んーっ」とyoshiは寝返りをうつ。 「こら、起きろ」 もう一度声を掛けると、  「…抱っこぉ」 yoshiは両手を伸ばして抱き付いてきた。 「嘉樹…?」 抱き付いたyoshiはウトウトしながら抱き付いた相手の匂いを感じた。 タケル………………………? あれ? 香りが違う?  うっすらと目を開けて相手を見た。 ゲッ、  「光一、何やってんだよ!」 目の前に居て、抱きしめているのは豊川でなく光一だった。  慌てて離れたyoshiは文句を言う。 「お前が抱き付いてきたんだろ!」 光一は2時間したらyoshiを起こしてやって欲しいと豊川に頼まれ起こしに来たら、いきなり抱っこぉと言ってyoshiが抱き付いてきたのだ。  ぶっちゃけ、寝ぼけていたyoshiは可愛かった。

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