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ココロ 5話
温かいyoshiの感触。
甘えたように抱き付いてくる仕草。
可愛いだろ!こんちくしょう!
「変態」
yoshiは文句を言うとベッドから降りる。
「誰が変態だよ!嘉樹から抱き付いて来たんだって言ったろ!」
ベッドから降りて仮眠室を出て行くyoshiの後を慌てて追いながら光一は否定する。
「俺が光一に抱き付くわけねーじゃん!バカ」
「抱き付いて来たんだって!」
「しつけえーよ、…あれ?豊川さんは?」
いつもなら2人の言い争いを止めてくれる豊川の姿が社長室に彼は居ない。
「あ、豊川なら客が来て出掛けた」
「客?仕事?」
「仕事じゃないな、昔の友人…悪友?全く、俺はアイツ苦手なのに豊川は良く付き合い止めずに居るよなあ」
薫の話をする度に光一は嫌な顔をする。
「アイツって?」
「高校時代からの悪友でさ、田中薫って女みたいな名前なクセにガタい良くて目つき悪い野郎でさ」
余程嫌な思い出があるらしい光一はブツブツと文句を言っている。
「……その人が何の用?」
知らない名前。
また、豊川の知らない過去。
「さあな?でも、もうちょっとしたら戻ってくるはずだけどな」
光一はチラリと腕時計を見た。
******
薫は顔を近付けて、そのまま耳元で、
「からかうと相変わらず可愛いなタケルは」
と囁いて離れた。
目を見開いて自分を見る豊川。
「期待したか?」
相変わらずにニヤニヤする。
「薫」
眉間にシワを寄せて薫を睨み付けた。
「久しぶりだからからかっただけだ」
「趣味悪いぞお前」
「そっかあ?俺は面食いだと思うぞ、お前もそうだし、今の玩具も可愛い顔している」
「そんな意味じゃない!」
豊川はニヤつく薫の表情で冗談だと分かったがイラついて怒ってしまった。
「怒ったタケルもそそるけど、そろそろ本題だ」
どんな難問を言われるか覚悟を決める豊川だった。
「SAKUMAブランドの新作をすぐに回して欲しい」
はい?
どんな要求をされるかと思ったら、拍子抜けするような要求。
「俺の自社ビルの中のテナント捜してたんだよ、お前んとこのブランドの店をそこに入れたい」
「拒否権なしだろ?」
「もちろん」
ニッコリ微笑む薫。
「佐久間に話すよ」
「物分かりが良い元恋人で良かった」
ケッ、脅したのは誰だよ!
豊川は睨む。
「また連絡する、あ、2人分服を用意してくれ、これはちゃんと金払う」
「2人?玩具って2人居るのか?」
「お気に入りが2人なだけだ、ヤルだけの道具なら何人もいるぜ、タケルもお望みとあらば入れてやる」
「断固断る」
豊川は立ち上がると帰ろうとする、
が…、腕を掴まれ引き寄せられた。
驚いて顔を上げると、 彼の顔が近づき抵抗する間もなく唇が奪われた。
………………………………!
熱い舌が絡んでくる。
ねっとりとした舌からはコーヒーの味がして、豊川は押しのけようとするが腕はすでに薫に強く掴まれていた。
「…かお…る、」
離せと訴えるが壁に押し付けられた。
付き合っていた頃を思い出した。
薫と初めてキスをしたのは高校の生徒会室。
今みたいにいきなりキスされた。
付き合っていたとかじゃなく、話をしていて突然。
その後薫に半場無理やり抱かれた。
散々抱いた後に、
「お前最高に良かったぜ。このまま付き合おう」
と言われて驚いた。
初めてでは無かったし、年上の恋人と別れたばかりだったから承諾して付き合った。
薫の舌はそんな思い出を思い起こさせる。
くちゅ、くちゅ、っと舌が絡む音。
あの頃と変わらないキス。
「色っぽい顔しやがって…」
唇を離すと薫はイスに豊川を座らせるとネクタイを外し出す。
「薫、お前とヤルつもりはない」
豊川はそう言うと薫の腕を振り払った。
「子猫ちゃん抱く方がいいか?」
薫は素直に豊川を解放した。
「子猫ちゃんによろしく」
バーを出る豊川の背中に薫は声をかけた。
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