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ココロ 7話

**** yoshiは渋々、光一も家へ入れた。 「余計なもん触るなよ」 光一にキツく注意しながら自分の部屋へと2人を案内する。 初めて入るyoshiの部屋に2人は互いに感動しているように見える。 「着替えとか詰めるから待って」 yoshiは大きめのボストンバックを持ち出すと床に投げた。 「手伝うよ」 と豊川が言うと、  「俺も」 光一も名乗りを上げる。 「いいから2人は座って待っててよ」 yoshiは手際良く着替えを詰めていく。 「はい」 いい歳をしたオジサン2人はyoshiの言葉に従い大人しく近くに座った。 光一はキョロキョロとyoshiの部屋を見渡す。 綺麗に掃除された部屋。物は少ないようでシンプルだ。  ふと、本棚にアルバムを見つけた。 自然に手に取りアルバムを開く。 瞬間……、 懐かしさで胸がいっぱいになる。  別れた当時の美嘉とyoshiの姿。 公園で撮られた写真。  当時住んでた場所の近くの公園だった。 日本に居た時の写真はその1枚だけで、後は小学生くらいのナオと小さいyoshiが仲良く本を読んでいる写真や、 犬と遊ぶyoshi。  そして、知らない男性に抱っこされて無邪気に笑うyoshiの写真。  ズキンッと胸が疼いた。 心がざわつく。 「光一、お前勝手に見たら嘉樹に怒られるぞ」 アルバムに見入る光一に気づき、豊川は耳打ちする。 でも、視界に入ってきた見知らぬ男性の写真に豊川もつい、見入ってしまった。  「あー、もう!勝手に」 yoshiはアルバムを見ている光一の手から、そのアルバムを取り返そうとするが、光一はアルバムを離さない。 「なあ、これが嘉樹の好きな親父さんか?」 変な話だ。  実の父親は俺なのに、他人の事をこんな風に聞かないといけないなんて。 「そうだよ。格好いいだろ!」 自慢気に言うyoshiに 「そうだな、格好いいよ」と微笑むとアルバムをyoshiに返す。  「煙草吸ってくる」 光一はそう言って部屋を出た。 「急にどうしたんだよアイツ?」 yoshiは不思議そうに豊川を見た。 ***** 心が掻き乱される。 今更…、 本当に今更だよな。  あの写真を見なきゃ良かった。 幸せそうに笑うyoshi。  血の繋がった親子のようで悔しかった。 手を離さなきゃ良かったんだ。  バイバイと手を振ったyoshiの手をギュッと掴んでいたら良かった。  玄関に座り込み空を見上げる。 都会から離れているこの場所は星がチラチラ見えていて、田舎の空を思い出す。 俯くとため息が出る。 煙草に火をつけて、光一はもう一度と空を見上げた。 ****** yoshiは着替えや必要最低限なモノを詰め込む。 豊川はまたアルバムを広げて写真を見ている。  「タケル、用意出来たよ」 ニコッと微笑むyoshi。  「嘉樹、…カウンセリング毎月行ってるんだろ?今度、一緒行って良いか?」 yoshiは戸惑ったような表情を見せる。  「ナオから聞いたの?カウンセリングの事…俺、カウンセリング行きたくない」 「行きたくない?」 yoshiは頷く。  「だって、いつも発作が起きて、入院する羽目になるもん、入院したらタケルに会えない」 「発作?喘息の?」 「うん。だから行きたくない」 「そっか、苦しいもんな」 豊川はyoshiの頭を撫でる。 「それに、記憶が抜けた部分を思い出す必要ってある?きっと要らない記憶だったから無くても平気だよ俺は」 その言葉に豊川は撫でる手が止まった。  平気じゃない奴も居るよ。  そう言いたかったが言葉に出来なかった。  「早く行こうよ。タケルんちのお泊まり嬉しい」 yoshiはバッグを手にする。  「私が持つよ」 豊川はyoshiの手からバッグを取ると一緒に部屋を出た。 

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