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****** ため息ばっかだなあ。 光一は煙草をくわえたままでもため息をつく自分に気付く。 血の繋がらない父親を自慢げに話すyoshiの顔が頭から離れない。 はあ…、ため息をついた時に上着のポケットのスマホがバイブする。 確認すると珍しく拓也から。 「もしもし、どーした?」 「良かった、出た」 なんだか、何時もの彼ではないような感じを受けた。  「何かあったのか?」 「智也が熱あって、凄く苦しそうで」 切羽詰まったような拓也の声。 「智也が?待て、家にお前達だけなのか?」 もし、家に麻衣子が居るなら光一に電話は掛けて来ない。  「うん」 不安そうな拓也の声。  「分かった、今から戻るから待ってろ」 光一が電話を切ると丁度、yoshiと豊川が出て来た。 「俺、帰るよ。智也が熱を出したらしい」 光一は2人にそう言うと急いで車へと戻って行った。  お大事に、なんて言葉も掛けられないくらいの速さだった。  「ちゃんと父親してんだな」 光一の後ろ姿を見送りながらyoshiは呟く。  豊川はぎゅっとyoshiの手を握る。  もしかしたら血の繋がらない父親を恋しがるかも知れない。  光一の事を忘れているとしても、自分より後に産まれた子供を可愛がる姿は複雑かも知れないし。 ぎゅっと握る手をyoshiも握り返して来た。  「早く行こう」 yoshiはニコッと豊川に笑い掛ける。  豊川も早く部屋に戻って、yoshiを抱きたかった。 早歩きで車に戻りマンションへと向かう。  「なんか同棲するみたいでドキドキする」 車内でyoshiは無邪気に笑う。  ****** 「拓也、智也は?」 光一が子供部屋を開けると拓也がホッとした顔を見せた。 智也の側に近付くと頬が紅潮し、大量に汗をかき、苦しそうに息を吐いている。 確かにこれは焦るよな。 拓也が電話越しに焦っていた気持ちが分かる。 智也をシーツにくるみ、病院へ連れて行く為に車に向かう。 「俺も行く」 拓也も後から付いて来た。 病院へ着き、智也を医師に預け、暫く呼ぶまでは待っていて下さいと看護士に言われ、拓也と一緒に診察室近くの長椅子に座る。 智也が心配な拓也は落ち着きがない。  「大丈夫だよ。ごめんな、拓也1人で不安だっただろ?」 そう声を掛ける。  「来てくれると思わなかった」 ボソッと声に出された言葉にチクリと来る。 「そっか、期待しないよな。普段から家に居ないし…でも、それでも頼ってくれて嬉しかった」 自分でも不思議なくらいに拓也に思った事を言葉に出来た。 拓也もきっと意外だったのかも知れない。 光一の言葉にちょっと驚いたような表情を見せた。 「麻衣子に任せっきりだもんな俺。今日みたいな状況はいつもじゃないよな?」 「…良くある事だよ。俺はもう慣れたけど智也は小さいから可哀想だ。今日だって朝から具合悪そうだったのに我慢して学校に行ったんだよ智也は、で、熱出して学校から連絡したけど、あの人は携帯にさえ出なくてさ、智也が俺の携帯の番号言ったみたいで電話あって迎えに行ったんだ」 なんだソレって思った。 麻衣子が家庭の事を全部やっていると決め付けていた。 「ごめん、ごめんな拓也」 謝っても、きっと許してくれないかも知れない。 自分は何てバカなんだろう?  親で苦労したのに、自分も同じ事をyoshiや拓也や智也にしている。 yoshiと出会ってから自分のバカさ加減と父親としての責任の無さを痛いくらいに感じるのだ。  「別にいいよ…もう慣れたって言ったじゃん。期待とか何もしてないし、俺らの父親で居なくてもいいよ」 ドクンッと心臓が大きく動いた。 否定されるのは辛い。

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