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影 2話

バッサリと斬られた感覚。 「厳しいな……」 そう返すのが精一杯。 「勘違いしないでよ、別にアンタを否定してる訳じゃない。俺だってアンタが嫌いなわけじゃないしさ」 拓也はいつも光一と話す時は目を合わせなかった。でも、今はちゃんと光一を見て話している。 「ねえ、記事に載ってた前の奥さんとの子供とは会ってるの?」 ふいに振られた質問。 驚いた。 記事を知っていたなんて。 自分の記事を見ていたなんて、光一は驚き過ぎて言葉に詰まった。 「俺がアンタを奪ったんだよね。記事に載ってた人から」 拓也が何を言いたいか分かった。  離婚の原因は麻衣子。  拓也は直接は関係ない。 別れた時はまだ麻衣子は妊娠していなかった。  「まだ、会ってないなら、ちゃんと会ってやったら?」  拓也はどういうつもりでこんな事を言い出すのだろう? 「それから、離婚考えなよ。あの人、愛人沢山いるからさ。夫婦でいる意味ないじゃん」 「拓也」  なんて、辛い事を言わせているのだろう? 「新崎さん」 親子の会話を裂くように看護士が呼びに来た。 連れて行かれた病室で智也は点滴をうたれながら眠っている。 2、3日入院だと言われ、光一は病院に残る事にした。 「俺も残る」 「拓也、学校あるだろ?」  「ボケてんの?明日休みだけど?」 そう言われ、曜日の感覚がない事に光一は笑ってしまった。  病院から毛布を借りて泊まる事にした光一と拓也。  金にものをいわせたわけではないが病室は個室。 気兼ねなく会話も出来る。 拓也と話すのはどれくらいぶりだろう? そして、yoshiは今…何をしているのだろうか? ****** 「嘉樹、着いたぞ」 豊川に肩を揺すられyoshiはうっすらと目を開けた。 豊川の顔が近いので、思わず両手を伸ばして抱き付く。 「まだ眠いか?」 豊川はクスクス笑っている。  車に乗って数分でyoshiは眠ってしまったのだ。 「タケルの匂い好き」 首筋に顔を寄せる。  「歩くか?それとも抱っこされたい?」 その質問にyoshiは、  「チュウしたい」 と答えた。  「チュウ?ここで?」 その質問の答えを実践するようにyoshiは豊川の顔を引き寄せてキスをした。  ヌルリと豊川の口内に侵入してくるyoshiの舌は柔らかくて甘い。 互いに荒い息を吐いて、共に求め合うようなキス。 ずっと、こうしていたいけど、場所は駐車場だ。 また、薫に何言われるか分からない。  名残惜しそうに豊川から唇を離した。  「もうちょっと…」 yoshiは甘えるように豊川の首筋に両手を回す。 「おわずけだ」 yoshiの両手を掴み、離すと、  「ケチ」 途端に拗ねる。  その表情も可愛いと捉えてしまう。 渋々とyoshiは豊川から離れる。 これから暫くこんな可愛い恋人と一緒に暮らせる幸せを再確認するようにyoshiの手を握った。 手から伝わる彼の熱さに押さえ込んでいた欲情に支配されそうになる。  薫に会ったせいかも知れない。 薫のキスは余計にyoshiを思いださせ、目の前の男がyoshiだったら…なんて考えてしまった。  どれくらいぶりだろう? 誰かを欲しくてたまらなくなるのは。  yoshiと一緒に部屋に入ると、荷物を置く暇さえも彼に与えたくないくらいに時間が惜しくて、玄関のドアが閉まると同時に、yoshiをドアに押し付けて激しく彼にキスをする。  良くyoshiが言う言葉。  タケルが足りない。  今は豊川がyoshiが足りない。  角度を変えて何度も、何度も深く熱いキスをyoshiに浴びせた。

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