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影 7話

****** 結局、麻衣子と連絡取れないまま朝を迎えた。 光一と拓也が何度電話しても電源を切っているとメッセージが流れるだけ。  智也が入院したとメールを送ってもみたが、未だに何もない。 寝ている拓也と智也を交互に見る。 傷付いている子供はyoshiだけじゃなかった。 両親が揃っていても幸せじゃない子供。 「おはよう。」 拓也が目を覚ました。 「おはよう。腹減ってないか?コンビニで何か買ってくるけど?」 「いや、いいよ。ね、もしかして寝てない?」 拓也は寝た様子がない光一を心配そうに聞く。 「徹夜は慣れてるよ。それより、もうちょっとしたら仕事に行かなくちゃいけないんだけど、拓也1人じゃ不安だよな?麻衣子には連絡取れないし」 光一は時計を気にする。 仕事と言って逃げる…そんなつもりはないけれど、こんな時くらい一緒に…………。 「智也は俺が見てるから仕事いきなよ」 拓也は毛布をたたみながらに言う。 昨日から感じていた拓也の大人びたような態度。 いつの間にか成長をしているんだなあって、感じる。  「拓也に嫌われる理由を本当はずっと気付いてた……ごめんな。俺、良い父親じゃない。」 改めて実感する自分の不甲斐なさ。 「ねえ?なんか勘違いしてない?」 「えっ?」 「俺は嫌ってないよ。仕事をしてくれているおかげで俺らは生活出来る。あの人が贅沢出来るのも仕事してくれているおかげなのにさ…」 拓也はちょっと笑って、 「俺は…前の奥さんとの子供が羨ましい…それが本音」 そう言った。 「なんで嘉樹が羨ましいんだ?」 「嘉樹って言うんだ…」 拓也は名前を呟き少し寂しそうに見える。 「拓也?」 何が言いたいのか分からない光一は困惑する。 「あ、時間大丈夫?」 拓也が時間を気にしてくれる。  「仕事終わったら病院に寄るから」 そう約束して光一は病院を後にした。 ****** 社長室、佐久間と豊川は真剣に話を始めた。 そうなるとyoshiは遠巻きに見ているしかない。 パソコンをいじって自分なりに仕事をするが、豊川が気になる。仕事をしている時の豊川がカッコいいからだ。 自分に向ける優しい顔も好きだけど、真剣な顔の豊川も好き。 「嘉樹、コーヒーをお願い出来るか?」 豊川が座ったままに声を掛ける。 「うん」 yoshiが立ち上がると、  「いいよ嘉樹くん大丈夫だから」 佐久間がストップをかける。 「…いえ、大丈夫です」 yoshiは豊川の言う事を優先する。 社長室を出るのを確認すると豊川は薫の話を始めた。  別にyoshiに聞かせても良い話なのだけど、なんとなく気まずい。  薫にキスをされた事がやましいのかも知れない。 「yoshiくんおはよう!」 社長室を出るとマコトに会った。 「おはよう!まこちゃん、今日はこっちなの?」 「今日は休みなんだけどさ、家に居ても暇だし」 マコトはそう言って笑う。 「yoshiくん、タケちゃん居ないの?」 いつもyoshiの隣には豊川が居るのに、朝から1人でいるyoshiを見かけたから、つい、居ないのかな?なんて思ってしまった。 「居るよ、佐久間さんと話してる。」 yoshiはコーヒーメーカーのスイッチを押す。 「何の…」 話?と聞こうとした時に携帯が鳴る。 着信は光一から。  「おはようコウちゃん早いね」 yoshiはマコトの電話の相手が光一だと分かると少し気になった。 ****** 光一は車内からマコトに電話を入れる。 今日は休みだと言っていたのを思い出したのだ。拓也は大丈夫だと言ってはいたけれど、まだ子供。 大人が1人でも居た方がいい。  「おはよう!コウちゃん早いね」 「マコト…今日休みだろ?お願いがあるんだけど」 「なに?」 「智也が入院して、拓也が一緒なんだけどさ、麻衣子には連絡つかないんだよ。俺は仕事だし…無責任かもしれないけどマコトに付き添いを頼みたくて」 電話に出たマコトに智也の入院を告げた。  「えっ?智也君入院したの?!分かった病院どこ?」  マコトは2つ返事でOKしてくれた。 ***** 「智也、入院するくらい酷かったの?」 電話の内容で智也の入院に驚いたyoshiはマコトが電話を切ると心配そうに聞いた。 「すぐに退院出来るらしいけど、お兄ちゃんの拓也くんが付き添っているんだって、コウちゃん仕事だし」 「えっ?奥さんは?」 マコトは躊躇したが、 「連絡取れないんだって…」と答えた。 「何で?」 「詳しくは知らないけど、とにかく僕行ってくるから」 マコトは慌てて出て行った。  光一が前に言っていた事を思い出した。  料理を作ってくれない…。  まさか子供の面倒も見てないってコト? yoshiは心配になる。 ***** 「お兄ちゃん」 目を覚ました智也が窓際にいる拓也に呼び掛ける。 「智也」 拓也は自分を見ている智也の側に行き頭を撫でる。  「ここどこ?」 キョロキョロして智也は不安そうだ。 「病院だよ」 「お母さんとお父さんは?」 「お父さんは…さっきまで居たんだけど仕事に行っちゃった」 拓也は優しく智也の頭を撫でる。  「あ、…夢じゃなかったんだ」 「何が?」 「抱っこしてくれたよね?お父さん」 「うん」 「やっぱりそうなんだ。えへへ、嬉しい」 智也は嬉しそうに笑う。 「智也、お父さん好き?」 「うん」 迷いのない返事。  「お兄ちゃんも好きでしょ?」 「……そうだな」 笑って返事を返す。 「拓也くん!」 ドアが勢いよく開いてマコトが入って来た。  「マコちゃん」 智也は嬉しそうにマコトの名前を呼ぶ。  「マコちゃんなんで?」 拓也は何故マコトが居るのか不思議そうな顔をする。  「コウちゃんに聞いてさ」 「ああ、そっか」 拓也はちょっと安心したような顔になりマコトに微笑む。

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