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変わらぬ想い 2話
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「よう、タケル」
バーに着くと薫がめざとく豊川を見つけ近付いて来た。
「サク、彼が友人の田中薫」
佐久間に紹介すると薫の出す気迫に少したじろぎながら、 「初めまして、佐久間です。よろしくお願いします」と頭を下げる。
「こちらこそ」
と笑う薫は、 「イメージモデルの子猫ちゃんはやっぱり連れて来てないんだな残念」 そう言って豊川に睨まれる。
「子猫ちゃん?あっ、嘉樹くんの事ですか?」
佐久間は最初ピンと来なかったみたいだが、イメージモデルでyoshiの事だと分かった。
「そう、嘉樹くん。可愛いよね彼」
「はい。綺麗だし最高ですね」
即答する佐久間。
「尚更会いたくなるな」
ニヤリと笑う薫に豊川は「時間がないから早く話し合いをしよう」と急かす。
何を言い出すか分からない薫とこれ以上の雑談はしたくない。
「時間無い?恋人でも待たせているのかな?」
更にニヤニヤする薫。
「関係ないだろ?」
少し怒った口調になる豊川。
「分かりやすいよなタケル。」
笑い出す薫。
豊川が何か言いたげな顔をすると、
「冗談はこれくらいにして本題に入ろうか?照哉、資料をくれ」
奥にいた若い男性に声をかけた。
「どうぞ」
照哉と呼ばれた男性が資料とパソコンを手に奥へ行くよう豊川と佐久間に促す。
「なんか綺麗な子ですね。モデルか何かしてるんですか?」
照哉を見た佐久間の感想。
セミロングを後ろで束ね、背も高いし、何より綺麗な顔立ちをしている。
「いや。普通にボーイしてるよ」
「勿体無い!あんなに綺麗ならモデルいけますよ。スタイル良いし」
「じゃあ子猫ちゃんと組ませるか?嘉樹が子猫ちゃんなら照哉は黒猫だな」
ニヤニヤする薫を見て、今、気に入っている玩具は彼なのかな?と豊川は感じた。
「照哉が気になるか?」
視線で彼を追っていた豊川の耳元で薫が囁く。
「お前が言ってたお気に入りの玩具が彼なのかなあって気になった」
「それはヤキモチか興味か?」
「興味だな。お前が自分で気に入っているって言うの珍しいからな」
「そうか?タケルも気に入ってたぞ」
「そりゃどうも。で、お気に入りなのか?」
「そう、お気に入りだ。俺の言う事に一々刃向かって来るし、抱く度に凄い憎悪の目で睨まれる」
「恋人じゃ…ないのか?」
その内容から恋人同士だと想像出来ない。
「照哉には可愛い恋人が居るよ、俺はそれを承知で無理やり関係を作っている」
こんなとこ、昔のままだ。
昔から他人のモノを強引に奪うのが好きだった薫。
「お前……」
呆気に取られているわけではないが、薫をつい、ジッと見てしまった。
言いたい事は沢山ある。
でも、今更だ。
「こんな俺に惚れてたくせに」
そう言って薫はニヤリと笑い豊川の先を歩く。
「どうぞ」
席が用意されており、照哉がそれぞれ座る場所を案内してくれた。
近くでみた彼は、 血統書付きの黒猫だ。
しなやかで、猫みたいに大きな瞳は日本人にしては色が違うような印象を受ける。
案内が終わると少し離れた席に彼も座り、パソコンをいじり始める。
「社長、彼も良い感じですよね。嘉樹くんと組ませたら良いかも」
佐久間も彼を気に入っているようだ。
「まあ、それは後からだ」
豊川は早く仕事を終わらせたかった。
yoshiを1人にしたくない。
また不安がる。
「そう簡単に早く帰れると思うなよ」
それを見透かしたような薫の囁き。
「大事な話し合いだ。お互いに損をしないように話し合いをしないとな」
薫はそう言うとニヤニヤした顔から仕事をする顔になる。
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「ちぇ、何だよバカタケル」
スーパーの中、豊川からのメールを受信して拗ねたように呟く。
メールには、 夕飯は先に食べていなさい。
と書いてあった。
仕事だもん、分かってる!
そう考えても、心はしょんぼりとなる。
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