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変わらぬ想い 9話
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「拓也、おかえり」
マコトに送って貰ってドアを開けると光一が居て拓也は少し驚いた。
「なんで?病院じゃ?」
「寄ったよ。智也には麻衣子がついてるし、拓也飯まだだろ?」
「マコちゃんと食ってきた」
そう返事をすると拓也は靴を脱いで奥へ歩いて行く。
「なんだ~そっか、一緒に食べようかと思ったのになあ」
ちょっとガッカリした。
yoshiの手作り弁当を食べてから、なんとなく独身時代を思い出して料理を作ってみたのだ。
食べずに拓也の帰りを待っていた光一。
仕方なく1人でテーブルに着く。
「自分で作ったの?」
拓也は戻って来てくると、そう話しかける。
テーブルに用意されている2人分の食事。
「そうだよ」
光一は1人で食事を食べ始める。
「ふ~ん、俺も食おうかな?」
拓也は席に着く。
「食べて来たんじゃないのか?」
「育ち盛りだから悪いか?」
照れ隠しでぶっきらぼうに返事を返す。
「いや、悪くない」
光一は嬉しそうに拓也の分も注ぎ分ける。
2人で食べ始めると、 「今日、嘉樹に会った」と拓也が話を切り出す。
「えっ?何で………嘉樹と?」
光一は少し動揺する。
何で拓也と嘉樹が?
いつ知り合った?
色んな考えが頭を過ぎる。
「あいつ、めちゃ歌上手いじゃん」
拓也は食べながら話を続ける。
「歌?」
「街歩いてたら歌ってたんだよ。」
「ああっ」
それで知り合ったのか?と光一は納得した。
「女の子みたいな顔してた。童顔だからさ俺と同じくらいかと始め思ったよ」
「確かにな童顔だ。でも、本人には言うなよ気にしてるから」
「そこまで仲良くなってねーし、………あいつ、記憶ないんだってね。まこちゃんに聞いた」
その言葉に光一の顔が曇る。
「それで良いの?嘉樹、他人と暮らしているんだろ?取り戻さないの?」
拓也の言葉に何も返せない。
「嘉樹は悔しいけどちゃんとアンタの才能を受け継いでる。アンタの血受け継いでんのに、何で取り戻さないんだよ。記憶が無くても父親なのはアンタだよ、違う?」
段々と感情的になる拓也。
「何諦めてんだよ。馬鹿じゃねーの?自分がダメな父親だったって思い出して欲しくないだけならアンタ馬鹿だよ。またやり直せばいいだけじゃん、他人をお父さんと呼ばせたままでいいのかよ?無責任じゃん!記憶ないからって放置したままなら無責任だよ。ちゃんと父親の責任を取ってやれよ」
拓也は怒鳴りつけ、
「もう寝る!」
と席を立った。
図星ってわけじゃないけど、 拓也の言う通りだ。
諦めたのは確か。
やり直せばいいなんて怖くて考えられなかった。
「拓也、俺より大人じゃんか」
光一はため息をつく。
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豊川はyoshiを抱き込みながらウトウトしていた。
携帯が光る。
手に取ると薫からの着信。
yoshiをチラリと見た。
熟睡中の彼が起きないようにベッドを抜け出す。
「何の用だ」
イラつきながら電話に出る。
「何イラついてんだ?子猫ちゃんとのセックス中だったか?」
こいつは絶対に今、ニヤニヤしている。
「うるせえ、何の用だ?」
「お前が先に帰ったから言い忘れてたんだ」
先に帰ったのは誰のせいだよ! ちょっとイラッとくる。
「仕事中に恋人とセックスしやがってムカつく」
「交ざりたかったか?照哉は最高だぜ、お前となら照哉を共有してやってもいい」
「ふざけんな。それに彼はお前の所有物じゃないだろ。恋人なら大事にしろ」
「相変わらず優等生だな。照哉は見られながらヤった方が絞まり良くなるし、乱れるんだよ。現にお前が見ているのを知ってて抱かれてたんだぜ」
「てめーワザと見せたのか!」
「当たり、お陰ですげえ良いセックス出来たぜ」
「薫、お前いつか刺されるぞ」
元恋人のアホさ加減に呆れる。
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