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許容範囲 2話
「えっ、違います!」
アキは否定する。
「そう言う事にしといてやるよ」
必死なアキに佐久間はニヤニヤ。
「でも、嘉樹くんには手出さない方が利口だぞ?」
急に真顔になる佐久間。
「へ?」
「嘉樹くんは光一さんの息子だし、社長のお気に入りだ。この2人を敵に回すぞ?いいのか?」
その言葉に、 血が引くのを感じた。
そうだった。大事な事を忘れていた。
エレベーターが止まり、ドアが開くと光一が立っていてアキは短い悲鳴を上げる。
「何だよアキ、俺を見て悲鳴なんぞ上げて」
「あ、いや、別に~光一さん今から仕事ですか?」
慌てふためるアキ。
嘉樹に手を出そうとしたのがバレたのかと一瞬、勘違いした。
「嘉樹の見舞い」
「え?嘉樹くんどうしたんです?」
「体調不良らしくて、ちょっと様子見てくる」
「お、俺もいきます」
ヤバい、俺がちゃんと真っ直ぐ連れて帰らなかったせい?
「あ?なんで?」
ギロッと睨まれ、
「あ、いえ、嘉樹くんにお大事にと伝えて下さい」
とビクビクしてエレベーターを降りた。
******
「嘉樹、昼までやりまくるか?」
ベッドの中、腕に抱き込んだyoshiに声をかける豊川。
「お腹空いた」
yoshiの返事は空腹を訴える言葉だ。
「じゃあ、何か作ってやる」
豊川は起き上がると下着とスエットのパンツを穿き寝室を出る。
冷蔵庫を覗くと、困った事にアルコールとつまみくらいしかない。
「どしたの?」
yoshiも冷蔵庫を覗く。
「あ、昨日スーパー寄らないで酒飲んだんだった」
食べれそうなものがない。yoshiは失敗したなと思った。
「コンビニ行くか?」
yoshiに聞くと 「うん」凄く嬉しそうな返事。
「あ~でも、その前に」
豊川はyoshiを抱き上げてテーブルに乗せた。
「エロい格好だな」
豊川が欲情したのはyoshiが素っ裸に自分のシャツだけを羽織っているから。
「こんなのが趣味?」
「そうだよ。あと、裸エプロン」
そう言って豊川はyoshiにキスをする。
*******
光一は豊川のマンション近くで車を停める。
あ――なんか見舞いいるかな?
なんて考えても、yoshiが何を好きか分からないのが事実。
果物とか?スイーツとか?
そう考えていると、豊川の姿を見つけた。
そして、その横に一緒に居るyoshiの姿。
豊川ーっ!具合悪い嘉樹連れまわしやがって!
文句言ってやる!と車から降りて、足を止める。
凄く楽しそうな顔をして豊川と話すyoshi。
あんな顔、 するんだな………。
俺は見た事ない。
俺にはあんな顔してくれない。
yoshiの部屋で見た義父と一緒の彼もあんな風に楽しそうな顔ばかりをしていた。
まだ手元にyoshiが居た時も、笑った顔……………あまり見たことがない。
当然と言えば当然。
愛情を与えた事ない子供に笑って貰おうなんて都合良すぎるよな。
光一は車に戻り、エンジンをかけ、走り出す。
********
「コンビニ行くの好きなのか?凄く楽しそうだけど?」
真横を一緒に歩くyoshiはニコニコとして、何か可愛い。
「だって、タケルとコンビニなんて初めてだもん。」
yoshiはニコッと笑う。
「はい?」
「一緒にどこかに行くってあんま無いじゃん、だからコンビニでも嬉しいんだ」
本当に嬉しそうな顔で自分を見るyoshi。
なんて、
なんて可愛いんだろう?
「バカ………コンビニ以外も連れてくから」
照れる。
嬉しくて照れる。
「うん。今度一緒にスーパー行きたい」
「スーパー?」
「一緒に夕飯の材料とか選びたい」
あーーっ、もう!
「予定変更、スーパーに行こう」
豊川はyoshiの手を握りしめ駐車場へと向かう。
スーパーでも好きな相手と一緒なら楽しいとか、手を繋ぐとドキドキするとか、
小さい幸せを教えてくれるのはいつもyoshiだ。
2人で買い出しをして、マンションへと戻った。
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