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許容範囲 4話
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雑誌の仕事なんて初めてだし、スタッフがこの前より沢山居るし、yoshiの緊張はかなりピークに来ていた。
「タキさん、連れションしていい?」
拓海はふいに立ち上がる。
段取りの話が進み、素人のyoshiは豊川に任せっきりで頷くか返事をするだけで、息がつまりそうだった時の拓海の一言で、
「あちゃ~結構話してたな悪い」
と滝沢は笑って、ちょっと休憩ね。と言った。
「じゃ、遠慮なく。嘉樹、行くぞ」
と拓海はyoshiの腕を引っ張り上げた。
yoshiはビックリしたが、手を振り解こうとはしなかった。
外に出れるなら、何でも良かったから。
そして、トイレに連れて行かれて咳込んだ。
「やっぱ、連れて来て正解だったな」
拓海の手がyoshiの背中へと伸びてさすってくれる。
「薬は?その咳、喘息だろ?」
拓海の問いかけに、
「だい……じょうぶ、すぐに治まるから」
yoshiは息を整えて大きく深呼吸する。
「なんなら社長呼ぼうか?」
心配そうな拓海の顔。
この前といい、今日といい、彼には迷惑掛けっぱなしだ。
「ありがとう」
素直に言葉が出た。
そのありがとうに拓海は目を丸くして驚いている。
「どうした?めちゃめちゃ素直じゃん」
決して嫌みじゃないとyoshiにも分かっていて、
「この前、ちゃんとお礼言って無かったし、今日も……」
生意気そうだったyoshiはこんなに可愛い子だったっけ?と拓海を混乱させる。
「気になってたんだよ、俺も雑誌社初めてだった時めちゃくちゃ緊張して固まってた。さっきのお前みたいに。それに、緊張したり興奮したりしたら発作出やすいんだろ?ナオが言ってたから」
さらりと流れて行く言葉の中でナオの名前が呼び捨てになっている事に気付いた。
前はナオさんだったのに。
「そんな話……してるんだ?」
少し動揺しながら聞き返す。
「うるさいくらいにね。ヤキモチ妬いてんの気付いてないみたいだ」
ニコッと笑う拓海。
この時、もう完全にナオは拓海のモノだと確信した。
「なあお前、付き合っているヤツ居るだろ?」
「へ?」
ふいな質問にyoshiはちょっと動揺した。
「今日は流石にキスマークついてないけどさ。ナオがお前が最近家に真っ直ぐ帰らないし、凄く楽しそうだから恋人が出来たんじゃないかって気にしてて」
「あっ…」
そっか、キスマーク見られたんだ。なんて顔が赤くなる。
「ちょ、お前、んな可愛い反応すんなよ調子狂う」
拓海は笑い出す。
「か、可愛いとか言うなよ!そんなの男に言う台詞じゃないじゃん」
「あはは、ごめん。嘉樹年下だし、俺の弟と年変わらないからさつい、悪いな」
拓海はポンと嘉樹の肩を叩く。
なんか………何て言うか、拓海…初めて会った時と雰囲気が違う。
「拓海、今日は意地悪言わないんだね」
「はっ?」
今度は拓海がキョトンとする番。
「初めて会った時、凄く嫌なヤツだった」
yoshiは拗ねたような表情で、やはり可愛いって言葉が似合う。
「あ~そっか、ごめん」
拓海は頭を下げた。
「仕方ないじゃんか、直から飽きるくらいに嘉樹の話聞いててさ、ヤキモチくらい妬かせろよ。まあ、意地悪し過ぎたけど」
反省していると拓海は笑う。
「ヤキモチ妬くの何で?俺だって拓海にヤキモチ妬いてるよ。ナオは拓海が居るから日本に来たんだろ?」
まだ拗ねたままのyoshi。
可愛いけど、 やっぱコイツは分かっていない。
日本に来たのはyoshiの為。
でも、今は言えない。
「そうだね。でも、嘉樹もさ恋人居るから分かるだろ?ヤキモチ妬くのは」
誤魔化しながら話をそらしていく。
「まあ……」
少し同意したyoshiに拓海は微笑むと、
「でも、ナオに恋人紹介したらヤキモチ妬いてくれるかも」
そう言った。
紹介出来ないと分かっているから。
明らかに動揺するyoshiの耳元で、
「お前の恋人は豊川社長だろ」
と言った。
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