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許容範囲 6話

驚いたように目を見開いて自分を見るyoshi。 「なーんてな。嘉樹はまだ二十歳だもんな。それに男同士で結婚とか…」 と笑って冗談だよ。と言うつもりだった。もちろん冗談じゃないけれど、彼の年齢を考えると結婚なんてまだ先の話。  若い彼を縛り付けるつもりはないけれど、誰かに取られる前に……と少し、欲が出た。  「それってタケルと家族になるって事?」 冗談だよ。と言う前にyoshiが目を輝かせて聞いてきた。  「うん……まあ、そうなるな」 躊躇いがちに答える。 「俺、タケルと家族になりたい!ずっと一緒に居たい」 なんて、嬉しそうな顔をしてくれるのだろう? 豊川は手を伸ばしてyoshiを引き寄せた。 「結婚とかまだ先でも、ナオには挨拶に行こう」 「うん」 yoshiは嬉しそうに肩に頬を寄せた。 ******* 「嘉樹と仕事する事になったよ」 食事の用意をする直の横で手伝いながら拓海が言う。 「ああ、そうらしいね。さっきメールが来てた」 「えっ?嘘?何て?俺の事、何か言ってた?」 マズい事、言ったかな?なんて焦る拓海。 「また具合悪いのを気づいてくれたって、ありがとうな拓海」 ナオは頭にポンと手を乗せた。 「まあ……ね。ほら、嘉樹身体弱いしさ、気になって」 誉められた事にちょっと照れる拓海。 「拓海の事、初め嫌いだったけど、今は良い人だって分かって嬉しいってさ、さすが…ナオが選んだ人だって」 その言葉に拓海はマジマジとナオを見た。  「yoshiが、ナオをよろしくお願いしますって」 ニコッと笑うナオ。  あいつ……………、 yoshiにとってナオは大事な家族なのに。  よろしくお願いします、とか……。 「うわっ、泣くな!拓海」 ポロポロと涙を零す拓海にナオは慌てる。  「嘉樹に意地悪したのにぃ」 拓海は小さな子供みたいに泣き出して、 ナオはぎゅっと抱きしめた。 「拓海、僕は君が好きだよ」 耳元で囁かれる言葉。  拓海は背中に手を回して「なお………だいすき」と大泣きした。 ******  メールでナオと会話しながら、この流れで恋人が居ると伝えようかyoshiは悩んだ。 大事な事だしなあ。一旦メールを中断させた。 「嘉樹」 後ろからぎゅっと豊川に抱きしめられて、ちょっと驚いた。 豊川はぎゅっとyoshiの手を握っている。 それで、爪を無意識に噛んでいたのだと気づいた。 「ごめんなさい」 「何で謝ってんだ?」 抱きしめられたままに豊川に聞かれた。 「爪噛んじゃダメだって言われてたのに」 「怒ってないよ?何か不安な事や寂しい事があるなら、ちゃんと私に伝えてくれると嬉しい」 豊川はそう言うと力を込めた。 「今、ナオにメールしてて……拓海との仲認めてなかったから、ちゃんと認めた事を伝えたら寂しくなってさ………ナオ、拓海に取られちゃったみたいで」 「そっか、ナオは大事な家族だもんな」 豊川は髪に優しくキスをする。 「うん。俺の大事なお兄ちゃんだからさ。でも、いつまでもお兄ちゃんっ子じゃダメだし……俺にはタケルが居るし」 「嬉しい事言ってくれるな。もうチュウしたいくらいだ」 クスクスと笑う豊川。  yoshiは体勢を変え豊川の方向に向くと両手を背中に回す。 「タケル好き」 そう言って目を閉じる。 yoshiの唇に温かい感触。 豊川の唇。 軽くキスをして離れると、 yoshiはナオに電話を掛ける。 ******* ナオの携帯が鳴る。 食事をしようとしていた直は携帯の表示画面を見た。 yoshiの名前。 携帯を持ち、テーブルを離れた。 別に拓海に聞かせても良いはずなのに、何故か席を立ってしまう自分が居る。 「yoshiどうした?」 声を掛けると少し間が空いて、  「ナオ……あのね。会って欲しい人が居るんだ」 と切り出された。  ドクンッと心臓が大きく脈打つ。 「改まってどうしたの?」 精一杯、平静を装う。 「ナオも気付いてるだろうけど、俺………好きな人が出来て、その人は付き合ってるんだけど、ナオにきちんと紹介したくて」 ああっ、この日が来てしまったとナオは激しく脈打つ胸を押さえた。

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