159 / 275
許容範囲 7話
「そっか、うん、やっぱりそうじゃないかと思ってたよ。どんな可愛い子かな?」
そう返すのが精一杯。
電話の向こうのyoshiが少し戸惑ったような感じが伝わってきて、自分の本当の心を読まれたんじゃないかって、つい勘ぐってしまう。
「どうした?」
激しく心臓が脈打つから手まで震える。
「あのね………相手、年上なの」
自分の様子を伺うようなyoshiの声。
年上?
「それから、ナオは分かってくれると思うんだけど…………付き合っている人。男性なんだ」
一瞬頭が真っ白になる。
今、何て?
男性?
「男性なのか?」
呼吸を整えて、ゆっくりと言葉にした。
「うん……凄く優しい人だよ。ナオも知ってる人」
「えっ?」
自分が知ってる相手………そして、年上。
もう、1人しかいない。
「豊川さん?」
言った後で手が震えた。
「うん。そうだよ………付き合ってる」
そんな……。
いつから?
出会ってからそんなに間がないのに。
「あの、ちゃんと真剣に付き合ってるよ。心配しないでね。それでナオに紹介したくて」
自分が黙っているから焦ったようなyoshiの声。
「分かった。ちょっとビックリしただけ。うん、挨拶しなきゃね」
明るい声で答える。
「良かった。ナオは俺の大事な家族だから」
家族…………、 そう、自分はその領域から出る事はない。
「そうだね。僕も豊川さんに挨拶したいな。yoshiをよろしくお願いしますって」
「本当?良かった。じゃあ、ナオいつ会ってくれる?明日とか?」
嬉しそうなyoshiの声に胸がチクチクと痛くなる。
「うん、明日……僕がそっちに行くから」
「わ、分かった!タケルに伝える」
タケル。
豊川の下の名前。
自然に名前を呼ぶ声。
ああっ、そうか………もう、yoshiは自分だけのモノじゃない。
「じゃあ、明日」
そう言って電話を切った。
鼓動が早すぎて胸を押さえてナオは座り込んだ。
yoshiを誰かにいつかは取られる覚悟はあったけど、それは女性だと思っていた。
yoshiがノンケだから思いも封じ込めて、汚さないように我慢したのに。
今更………。
じゃあ、あのキスマークは豊川さん?
yoshiを抱いてたんだ。
じゃあ今も?そうだよ、今、一緒に居るじゃないか。
ドクンッとまた心臓が大きく脈打つ。
いやだ………。
yoshiを抱かないでくれ!
ずっとずっと我慢して来た。
触れたいのに心を殺して。
キスしたい。
抱きたい。
自分のモノにしたい。
yoshiを抱くのは僕。
愛しているのも僕。
分かってあげられるのも僕。
僕なのに!
「ナオ、大丈夫?」
拓海の声にハッと我に返った。
「拓海」
拓海が心配そうに覗き込んできた。
「あっ、大丈夫だよ。最近よくあるんだ……めまいみたいな感じ」
「えっ?大丈夫?ベッドで休もう」
拓海はナオを支えながら立たせた。
ヨロヨロと歩いてベッドへと着いた。
「水とか」
拓海はナオを寝かせると離れようとする。がっ、腕をつかまれて、引き寄せられた。
「なおっ」
ナオの上に倒れる拓海。
拓海をぎゅっと抱きしめて「拓海が欲しい」と言葉にした。
そうだ。僕には拓海が居るのに。
こんなにも健気に愛してくれる拓海が居るのに!
拓海を下に組み敷いて、激しくキスをする。
忘れなきゃ…………。
yoshiはもう僕のモノじゃない。
抱きたくても、あの人のモノ。
「なおっ」
自分の下で乱れる拓海。
こんな風にyoshiも今頃抱かれている。
脚を広げ、豊川のモノを受け入れ、激しく揺さぶられて、喘ぎ声を出しているのだろうか?
yoshiは男性にいつから興味を?
父親と同じ年の男に身体を自由にさせるなんて。
こんな事なら、あの時抱いていれば良かった。
抱いていたらきっと今は自分のモノ。
裸にして抱いている拓海がふと、あの時のyoshiと重なった。
あの夜……
兄も義姉も居なくて、つい好奇心でビールを飲んで酔っ払ったyoshiが暑いからとナオの前で全裸になった。
そして、何時ものように甘えて抱き着いてくるから……
たまらずに押し倒して、yoshiの身体にイタズラした。
その忌まわしい記憶。
ともだちにシェアしよう!