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愛の重さ 4話
これでいいんだと憂は泣きながら歩いた。
初めから分かってた事だった。
誘われた時、断る事も出来たのに拓海のマンションに行って抱かれた。
処女なのが嫌だったのと、セックスに興味があって尚且つ、誘ってきた相手が格好良くて理想だったから。
好きだとか愛してるとか言われていないのに、一夜限りの性行為で拓海を自分のモノだと勘違いした。
馬鹿みたい。
憂は涙を拭いて、深呼吸をした。
駐車場に居るマネージャーに「ちゃんと振られてきたよ」と報告をした。
「そっか、偉かったね」
マネージャーは憂の頭を撫でてくれた。
もういいや。忘れよう。
憂はそう思った。
*******
「モテるな拓海」
真鍋がニヤニヤしながら拓海を見ていた。
「いつから見てたんですか?」
「憂が来たあたりから」
社長は拓海の横に立つと腰に手を回した。
これは寝ようの合図。
「拓海、今日はホテルのスウィートを用意したんだ」
社長は拓海のスケジュールを知り尽くしているから、次の仕事がいつからかを把握している。
一緒に歩き、社長の車に乗った。
駐車場を出る時に憂が乗った車とすれ違う。
助手席で俯いている憂は泣いているようで、心がチクンときた。
今までも沢山泣かせてきたのに、今回は心が痛い。
きっと泣かした相手の気持ちが分かるようになったから。
これから自分に起こる行為と同じ。
好きでもない相手とセックスをする。
虚しさと罪悪感だけしか残らないのに。
本当に自分は馬鹿だ。
******
「タケル、怒った顔も最高だな」
車は駐車場へと入っていく。
車内であからさまに不機嫌だった豊川。
「どこだよここは?」
「先日オープンした会員制のホテルだよ。一般人は入れない高級ホテル」
「なんでホテルなんか?」
「お前も会員になれ。子猫ちゃん連れてくるといい。」
「は?まさか、このホテル」
「そう、俺の」
ニヤリと笑う薫。
ホテルは色んな設備があり豪華だった。
「ここを会場にしてSAKUMAのオープンパーティーをする。モデルの子猫ちゃんももちろん招くから連れて来い」
「やだね」
豊川は露骨に嫌そうな顔をして車から降りた。
「何でそんなに俺に会わせるのが嫌なんだ?」
ロックをすると薫は豊川と横に付く。
「お前にいやらしい目で見られるのが嫌なんだよ」
「ガキには興味ない。もう少し育ったら分からないけどな」
ニヤリと笑い、豊川を先導する。
外観もそうだが中も相当なものだった。
「お前にらスイートタダで貸してやるよ。子猫ちゃんと夜景見ながらセックスも最高だぞ」
エレベーターに2人で乗り込む。
「そのスイートに行くのか?」
「見たいだろ?」
「薫と見てもなあ」
「逃がさないけどな」
「は?」
「タケルを久しぶりに抱きたいなあって思って」
「冗談?」
「お前、俺以外に誰かに挿れられた事ないよな?抱くばっかりで。まさか子猫ちゃんがタチやってるとは思わないし」
「ふざけんなっ、帰る」
豊川はボタンを押そうとするが薫に掴まれ壁に押し付けられた。
「薫、てめえ!」
睨みつける豊川の唇に無理やりキスをしてきた薫。
*******
「拓海。何見てるんだ?」
夜景を見ている拓海を後ろから抱きしめる真鍋。
「ここ高いんじゃない?」
いつものホテルではなかった。
外観からしても、部屋の豪華さからも高いのは拓海にも分かる。
「ここは会員制なんだ。変なマスコミも近づけないし、一般人も入れない。だから、これからはここで」
真鍋はそう言うと拓海の首筋を舐める。
いや……っ、
「ねえ、お腹空いた」
行為を少しでも遅くする為にそう言う。
「それに風呂入りたいし」
「風呂かっ、一緒に入ろう。風呂も広くて良いぞ」
真鍋はそう言うとフロントにルームサービスを頼んでいる。
風呂から上がったくらいの時間帯を電話で伝えている。
その時間は風呂でやり終えたくらいの時間。
風呂でも抱かれるのか、とため息が出る。
何で俺は逃げないのだろう?
逃げる事も出来るのに。
「拓海、おいで、身体洗ってあげるから」
真鍋に呼ばれ、拓海は風呂場へいく。
そこで真鍋からシャツのボタンを外されていく。
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