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愛の重さ 7話
ピンポーン、 とチャイムがまた鳴った。
誰? まさかまた誰か呼んでたのか?
「お待たせしましたルームサービスです」とドア越しに聞こえてきた。
ああ、そうだ!!と真鍋が頼んだルームサービスの事を思い出した。
「ね、食べてからしよっ、どうせ夜は長いんだし」
拓海は明るい声で言う。
「腹減ってるって言ってたな」
と真鍋が応対しようとするのを拓海は止める。
「社長、俺が出るよ」
ニコッと笑う。
そして、相模にくわえられていたモノを出してもらい、服を直しながら対応に出る。
ドアを開け、ルームサービスを受け取る振りをして、 開いたドアから素早く外に走り出した。
自分でも驚いた。
逃げる事が出来るなんて!
後ろで声がしたけれど構わず走った。
捕まる事は許されない。
待っているのは屈辱だけなのだから。
追いかけてくる足音。
エレベーターで逃げる?
待ってる間に追いつかれるかも?
そう思っていたらエレベーターのドアが偶然にも開いた。
慌てて乗り込もうとして、中から降りようとした誰かにぶつかった。
「すみません」とっさに謝る。
「拓海?」
名前を呼ばれ驚いて相手を見た。
「豊川さん……」
ぶつかった相手は豊川だった。
「こんな所でどうした?」
聞いてくる豊川にしがみつくと、
「たすけて」
と震える声で言った。
「拓海、どうした?」
震えながらしがみつく拓海の様子がおかしい事にすぐに気が付く。
「拓海、待て」
男二人が拓海を追いかけてきた。
そして、豊川に気付いた真鍋が少し動揺しているのにも豊川は気付く。
「豊川……君もここの会員か?まあ、当然と言えば当然だなっ」
普通に振る舞う真鍋。
「拓海に何かしたのか?」
豊川は真鍋の後ろの男をチラリと見る。
服が乱れている。
もちろん真鍋も。
そして、自分にしがみつく拓海のシャツのボタンが何個か無いのにも気が付いており、震えている理由が1つしかないのも分かっている。
「ああ、ちょっと怒りましてね。彼のワガママ知っているでしょ?それを注意していたら、突然逃げ出してね。ほら、拓海こっちに来なさい、迷惑かかるだろ」
真鍋の手が伸びる。
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