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距離

******* 最上階の部屋。 抱きかかえた拓海と一緒に中へ入る豊川。 薫に誘導され寝室へ。 キングサイズのベッドに拓海を寝かせた。 ボタンがちぎられ、露出した肌には生々しいキスマークのあと。 野郎2人にか……。 拓海の手首に強く握られうっ血したあともある。 肌を隠してやるように豊川はシーツをかけた。 「追いかけてきたのは拓海の事務所社長だろ?自分の商品に手をつけるのは三流のする事だな」 薫は鼻で笑う。もちろん真鍋に対してだ。 「じゃあ私も三流だな」 苦笑いする豊川。 「認めたな。お前の場合は恋人を商品にしたんだろ?」 「同じ事さ………でも、レイプはやらない。しかも野郎2人がかりで」 「ガタガタ震えてたからな。俺は商品に手は出さないがレイプはする。照哉がそうだからな。毎晩、無理やり抱いてる。俺も最低かな」 「まともな奴は居ないって事かよ」 「で、どうするんだ?1人で帰すとまた狙われるぞ」 「確かに1人に出来ない」 なんせナオはウチに居る。 「目を覚ましたら連れて帰るよ」 「子猫ちゃんがヤキモチ妬くぞ?…それとも、それが狙いか?」 クスクス笑う薫。 「妬いてくれたら嬉しいけどな」 ヤキモチ妬くとしたらナオの方かな? そんな事を考えていると着信が鳴った。 表示はナオ。 すぐにyoshiに何かあったのかと電話に出る。 「どうした?」 「あ、豊川さんお仕事中でしたらすみません」 「大丈夫だよ。何かあったのか?」 「もし、戻れるなら……嘉樹がちょっと熱っぽくって……事故の時の記憶が思い出したせいで混乱してて、…すみません、僕じゃダメみたいで、詳しくは帰ってからしますので戻れたら」 「すぐ戻る。ナオ、拓海も大変だったんだ。私と入れ替わりに拓海の側に、迎えをよこすから私が戻ったらそれに乗って拓海の側に」 「えっ?拓海が?何かあったんですか?」 慌てるようなナオに「とりあえず待ってろ」と豊川は電話を切ると薫を見る。 「子猫ちゃんの一大事か?」 薫はニヤリと笑う。 「運転手付きの車を出してくれ」 「俺をそんなに子猫ちゃんに会わせたくないのか?」 「違う。拓海を1人にしたくない。私と入れ替わりに拓海の恋人をよこすから、それまで拓海を」 「恋人?さっきの電話の主の声は男じゃなかったか?ああ、そう言う事か」 薫はすぐに理解したようで「これは貸しだからな」とそう言うとどこかに電話をした。  「10分で来る」 と薫。 「早いな………拓海をよろしく。くれぐれも手を出すなよ!お前好みの顔だろうけど」 豊川はドアの方へ歩きながら言う。  「寝込みは襲わない。タケル次第だな」 と豊川の腕を掴み「お前からキスしてくれたら手は出さない」と言った。  「殺されたいのか?」 豊川は薫を睨みつける。 「からかいたいだけだ」 薫はクスクス笑う。  「じゃあ、次会う時でいいぜ?じゃーな」 ニヤニヤ笑う薫に見送られながら豊川はエレベーターに乗り込む。 ****** 豊川を見送った後、薫は寝室に戻る。  人気イケメン俳優を目の前に待ての状態……。 髪をサラリと撫でる。 「こうやって見てるとまだガキなんだな。コイツも…」 そして、自分が毎晩無理やりセックスする照哉も。  まだ幼さが残る。  髪を撫でられたせいか、拓海が目を開けて薫を見た。  その瞬間……。 「いやっ」 怯えるように起き上がると後ろへ下がる。  知らない男。  知らない場所。  さっきまで自分は2人の男性相手に淫らな行為をさせられていた。  その延長かと怯える。  「そんな怯えるな。俺は豊川の友人だ。さっきエレベーターで会っただろ?」 そう言われ、豊川に助けを求めた事を思い出した。  「どっか痛い所ないか?」 薫に聞かれ、拓海は首を振る。  「着替え用意してやるから待ってろ」 薫はまた、どこかに電話をかけた。  「ちょっと時間掛かるみたいだ」 「あ、あの、大丈夫です。俺帰りますから」  拓海はベッドから降りるが、足に力が入らず薫に抱き止められた。

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