174 / 275
距離
*******
最上階の部屋。
抱きかかえた拓海と一緒に中へ入る豊川。
薫に誘導され寝室へ。
キングサイズのベッドに拓海を寝かせた。
ボタンがちぎられ、露出した肌には生々しいキスマークのあと。
野郎2人にか……。
拓海の手首に強く握られうっ血したあともある。
肌を隠してやるように豊川はシーツをかけた。
「追いかけてきたのは拓海の事務所社長だろ?自分の商品に手をつけるのは三流のする事だな」
薫は鼻で笑う。もちろん真鍋に対してだ。
「じゃあ私も三流だな」
苦笑いする豊川。
「認めたな。お前の場合は恋人を商品にしたんだろ?」
「同じ事さ………でも、レイプはやらない。しかも野郎2人がかりで」
「ガタガタ震えてたからな。俺は商品に手は出さないがレイプはする。照哉がそうだからな。毎晩、無理やり抱いてる。俺も最低かな」
「まともな奴は居ないって事かよ」
「で、どうするんだ?1人で帰すとまた狙われるぞ」
「確かに1人に出来ない」
なんせナオはウチに居る。
「目を覚ましたら連れて帰るよ」
「子猫ちゃんがヤキモチ妬くぞ?…それとも、それが狙いか?」
クスクス笑う薫。
「妬いてくれたら嬉しいけどな」
ヤキモチ妬くとしたらナオの方かな?
そんな事を考えていると着信が鳴った。
表示はナオ。
すぐにyoshiに何かあったのかと電話に出る。
「どうした?」
「あ、豊川さんお仕事中でしたらすみません」
「大丈夫だよ。何かあったのか?」
「もし、戻れるなら……嘉樹がちょっと熱っぽくって……事故の時の記憶が思い出したせいで混乱してて、…すみません、僕じゃダメみたいで、詳しくは帰ってからしますので戻れたら」
「すぐ戻る。ナオ、拓海も大変だったんだ。私と入れ替わりに拓海の側に、迎えをよこすから私が戻ったらそれに乗って拓海の側に」
「えっ?拓海が?何かあったんですか?」
慌てるようなナオに「とりあえず待ってろ」と豊川は電話を切ると薫を見る。
「子猫ちゃんの一大事か?」
薫はニヤリと笑う。
「運転手付きの車を出してくれ」
「俺をそんなに子猫ちゃんに会わせたくないのか?」
「違う。拓海を1人にしたくない。私と入れ替わりに拓海の恋人をよこすから、それまで拓海を」
「恋人?さっきの電話の主の声は男じゃなかったか?ああ、そう言う事か」
薫はすぐに理解したようで「これは貸しだからな」とそう言うとどこかに電話をした。
「10分で来る」
と薫。
「早いな………拓海をよろしく。くれぐれも手を出すなよ!お前好みの顔だろうけど」
豊川はドアの方へ歩きながら言う。
「寝込みは襲わない。タケル次第だな」
と豊川の腕を掴み「お前からキスしてくれたら手は出さない」と言った。
「殺されたいのか?」
豊川は薫を睨みつける。
「からかいたいだけだ」
薫はクスクス笑う。
「じゃあ、次会う時でいいぜ?じゃーな」
ニヤニヤ笑う薫に見送られながら豊川はエレベーターに乗り込む。
******
豊川を見送った後、薫は寝室に戻る。
人気イケメン俳優を目の前に待ての状態……。
髪をサラリと撫でる。
「こうやって見てるとまだガキなんだな。コイツも…」
そして、自分が毎晩無理やりセックスする照哉も。
まだ幼さが残る。
髪を撫でられたせいか、拓海が目を開けて薫を見た。
その瞬間……。
「いやっ」
怯えるように起き上がると後ろへ下がる。
知らない男。
知らない場所。
さっきまで自分は2人の男性相手に淫らな行為をさせられていた。
その延長かと怯える。
「そんな怯えるな。俺は豊川の友人だ。さっきエレベーターで会っただろ?」
そう言われ、豊川に助けを求めた事を思い出した。
「どっか痛い所ないか?」
薫に聞かれ、拓海は首を振る。
「着替え用意してやるから待ってろ」
薫はまた、どこかに電話をかけた。
「ちょっと時間掛かるみたいだ」
「あ、あの、大丈夫です。俺帰りますから」
拓海はベッドから降りるが、足に力が入らず薫に抱き止められた。
ともだちにシェアしよう!