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強さ

******* 「落ち着いた?」 豊川は腕の中のyoshiの頭を撫でる。 「……ける、ごめっ……」 まだ涙声のyoshi。 「何で謝ってるんだ?」 「し……ごと、だったんでしょ?ごめんなさい」 震える肩。本当に小さい子供みたいでキツく抱きしめたくなる。 「謝るな。嘉樹の方が大事だ」 豊川の本音。誰よりも彼を守りたいし、幸せにしたい。 「たける」 yoshiはようやく顔を上げて豊川を見た。 濡れた瞳。 泣き顔は本当に幼く見えて、こんなに幼い子を抱いているのかと罪悪感が少し顔を出す。 「たける、ごめんね。俺を大事だって言ってくれるのに………裏切りそうだった」 「えっ?」 キョトンとなる豊川に、 「ナオに抱いてもいいって言った」 衝撃的な言葉だけど、何よりyoshiが凄く傷ついた顔をしていて、責める事はもちろん、聞く事さえも躊躇する。 「タケルが好きなのに、あのままタケルに抱かれたベッドでナオとしようとした……」 水分を含んだ瞳からまた、涙がじわりと溢れて、豊川を見つめている。 「でも、しなかった。だろ?」 優しい口調で言う豊川にyoshiは小さく頷く。 「どうしてそうなったかは今は聞かないよ、もっと落ち着いてから聞くから、今は眠ろう……嘉樹、熱がある」 豊川は額に手をあてながらに言う。 「や、眠りたくない。怖い夢見るもん……それに、タケルともっと話したい」 「じゃあ、一緒に横になろう?それなら良いだろ?」 きっと身体はダルいはず、豊川はシーツをめくりyoshiと一緒に横になった。 yoshiの身体を抱き寄せると、ぎゅっと首筋に抱きつく彼。 「俺ね、ナオが小さい時から好きだった……」 その言葉に豊川はドキンとくる。 「でも……ナオは家族だから、諦めて……」 腕の中yoshiは震えていて、豊川は安心させるようにギュッと抱きしめる。 「今は……タケルが好き」 yoshiもギュッとしがみつく。 「タケルはどこにも行かないで、………お父さんみたいに居なくならないで」 「どこにも行かない。ずっと嘉樹の側にいる」 豊川のその応えに安心したようにyoshiは寝息をたてはじめた。 身体が熱い。 額を触るとさっきより熱い気がして、そっとベッドを抜け出すと氷枕を用意する。 体温計を探しだしてyoshiの体温を計ると38度。 病院………そう考えたが、また嫌がるのは目に見えている。 とにかく、朝まで待ってみるか? 氷枕をyoshiの頭の下に敷くと額に手をあてる。 ナオが好きだった。 過去形だけど嫉妬してしまう。 抱かれても良いとか、嫉妬しないわけがない。 現にyoshiの首筋には自分が付けた覚えがないキスマーク。 どこまでされた? 最後まではしていないのなら……yoshiはどこまで身体を許したのだろうか? yoshiを誰にも触れさせたくない。 本当は大事に部屋に閉じ込めておきたい。 でも、 それはエゴだ。 自分を好きと言葉にしてくれる彼を大事にしよう。 彼をずっと守って行こう。 ◆◆◆◆ 朝、yoshiの熱はだいぶ下がった。 看病してあげたいが、どうしてもキャンセル出来ない仕事。 yoshiの頬を触ると目を開けて豊川を見る。 「おはよう。気分は?」 微笑みかけるとyoshiは「おはよう。たける」と微笑み返してきた。 「今日は休んで寝ていなさい」 「タケルは仕事?」 「うん、ごめんな?なるべく早く帰るし、誰かを……」 「いいよ、大丈夫だから」 ニコッと笑うyoshi。 健気に感じてしまう。 yoshiの頭を撫でると豊川はマコトに電話をかける。 ****** マコトが朝食を食べている時に電話が鳴った。 表示は豊川。  タケちゃん?  どうしたんだろう、と電話に出た。  「おはよう。タケちゃんどうしたの?」 「おはよう。マコト、お願いがあるんだけど?」 「ん?何?」 「嘉樹が熱出して寝てるんだけど、私はどうしても仕事で付いててやれないんだ」 「え?嘉くん大丈夫?」 マコトはyoshiが小さい時から喘息を持っているのを知っている。  「熱は夕べより下がっているんだけど、どうしても1人にしたくない」 「分かった。今からそっち行くよ」 「助かるよ…」 豊川と電話のやりとりをしながらマコトは用意をする。 電話を終えてyoshiのベッドへと豊川は戻って来た。 「マコトが来るから」 yoshiの頭を撫でながら豊川は笑い掛けた。 「マコちゃん?俺、1人でも大丈夫なのに」 「ダメ、私は過保護なんだよ」 その言葉にyoshiは笑い出した。 「タケル、ギュッとして」 両手を伸ばすyoshiを豊川はギュッとする。 「エッチしたいなあ」 「ばか、お前熱あるだろ」 「だって、したいもん」 豊川を誘うような瞳で見つめる。 「だーめ、治るまでお預け」 「タケルのケチんぼ!」 拗ねたように口を尖らせるyoshiが堪らなく可愛い。  正直抱きたい。でも、yoshiの身体が心配。 「じゃあ、チュウで我慢する」 まぶたを閉じるyoshi。 キスくらいなら、と豊川は唇を重ねた。 熱いyoshiの口内へ舌を絡ませる。  頭を抱き込むようにキスをするとyoshiも豊川の身体をまさぐるように動かす。 軽く済むはずがないキス。 豊川の中でまだ嫉妬心が小さく残っていて、キスの後にナオが付けたキスマークに後付けをしてゆく。 yoshiのシャツをたくしあげてキスマークを消すようにキスをする。

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