179 / 275
強さ
*******
「落ち着いた?」
豊川は腕の中のyoshiの頭を撫でる。
「……ける、ごめっ……」
まだ涙声のyoshi。
「何で謝ってるんだ?」
「し……ごと、だったんでしょ?ごめんなさい」
震える肩。本当に小さい子供みたいでキツく抱きしめたくなる。
「謝るな。嘉樹の方が大事だ」
豊川の本音。誰よりも彼を守りたいし、幸せにしたい。
「たける」
yoshiはようやく顔を上げて豊川を見た。
濡れた瞳。
泣き顔は本当に幼く見えて、こんなに幼い子を抱いているのかと罪悪感が少し顔を出す。
「たける、ごめんね。俺を大事だって言ってくれるのに………裏切りそうだった」
「えっ?」
キョトンとなる豊川に、
「ナオに抱いてもいいって言った」
衝撃的な言葉だけど、何よりyoshiが凄く傷ついた顔をしていて、責める事はもちろん、聞く事さえも躊躇する。
「タケルが好きなのに、あのままタケルに抱かれたベッドでナオとしようとした……」
水分を含んだ瞳からまた、涙がじわりと溢れて、豊川を見つめている。
「でも、しなかった。だろ?」
優しい口調で言う豊川にyoshiは小さく頷く。
「どうしてそうなったかは今は聞かないよ、もっと落ち着いてから聞くから、今は眠ろう……嘉樹、熱がある」
豊川は額に手をあてながらに言う。
「や、眠りたくない。怖い夢見るもん……それに、タケルともっと話したい」
「じゃあ、一緒に横になろう?それなら良いだろ?」
きっと身体はダルいはず、豊川はシーツをめくりyoshiと一緒に横になった。
yoshiの身体を抱き寄せると、ぎゅっと首筋に抱きつく彼。
「俺ね、ナオが小さい時から好きだった……」
その言葉に豊川はドキンとくる。
「でも……ナオは家族だから、諦めて……」
腕の中yoshiは震えていて、豊川は安心させるようにギュッと抱きしめる。
「今は……タケルが好き」
yoshiもギュッとしがみつく。
「タケルはどこにも行かないで、………お父さんみたいに居なくならないで」
「どこにも行かない。ずっと嘉樹の側にいる」
豊川のその応えに安心したようにyoshiは寝息をたてはじめた。
身体が熱い。
額を触るとさっきより熱い気がして、そっとベッドを抜け出すと氷枕を用意する。
体温計を探しだしてyoshiの体温を計ると38度。
病院………そう考えたが、また嫌がるのは目に見えている。
とにかく、朝まで待ってみるか?
氷枕をyoshiの頭の下に敷くと額に手をあてる。
ナオが好きだった。 過去形だけど嫉妬してしまう。
抱かれても良いとか、嫉妬しないわけがない。
現にyoshiの首筋には自分が付けた覚えがないキスマーク。
どこまでされた?
最後まではしていないのなら……yoshiはどこまで身体を許したのだろうか?
yoshiを誰にも触れさせたくない。
本当は大事に部屋に閉じ込めておきたい。
でも、 それはエゴだ。
自分を好きと言葉にしてくれる彼を大事にしよう。
彼をずっと守って行こう。
◆◆◆◆
朝、yoshiの熱はだいぶ下がった。
看病してあげたいが、どうしてもキャンセル出来ない仕事。
yoshiの頬を触ると目を開けて豊川を見る。
「おはよう。気分は?」
微笑みかけるとyoshiは「おはよう。たける」と微笑み返してきた。
「今日は休んで寝ていなさい」
「タケルは仕事?」
「うん、ごめんな?なるべく早く帰るし、誰かを……」
「いいよ、大丈夫だから」
ニコッと笑うyoshi。
健気に感じてしまう。
yoshiの頭を撫でると豊川はマコトに電話をかける。
******
マコトが朝食を食べている時に電話が鳴った。
表示は豊川。
タケちゃん?
どうしたんだろう、と電話に出た。
「おはよう。タケちゃんどうしたの?」
「おはよう。マコト、お願いがあるんだけど?」
「ん?何?」
「嘉樹が熱出して寝てるんだけど、私はどうしても仕事で付いててやれないんだ」
「え?嘉くん大丈夫?」
マコトはyoshiが小さい時から喘息を持っているのを知っている。
「熱は夕べより下がっているんだけど、どうしても1人にしたくない」
「分かった。今からそっち行くよ」
「助かるよ…」
豊川と電話のやりとりをしながらマコトは用意をする。
電話を終えてyoshiのベッドへと豊川は戻って来た。
「マコトが来るから」
yoshiの頭を撫でながら豊川は笑い掛けた。
「マコちゃん?俺、1人でも大丈夫なのに」
「ダメ、私は過保護なんだよ」
その言葉にyoshiは笑い出した。
「タケル、ギュッとして」
両手を伸ばすyoshiを豊川はギュッとする。
「エッチしたいなあ」
「ばか、お前熱あるだろ」
「だって、したいもん」
豊川を誘うような瞳で見つめる。
「だーめ、治るまでお預け」
「タケルのケチんぼ!」
拗ねたように口を尖らせるyoshiが堪らなく可愛い。
正直抱きたい。でも、yoshiの身体が心配。
「じゃあ、チュウで我慢する」
まぶたを閉じるyoshi。
キスくらいなら、と豊川は唇を重ねた。
熱いyoshiの口内へ舌を絡ませる。
頭を抱き込むようにキスをするとyoshiも豊川の身体をまさぐるように動かす。
軽く済むはずがないキス。
豊川の中でまだ嫉妬心が小さく残っていて、キスの後にナオが付けたキスマークに後付けをしてゆく。
yoshiのシャツをたくしあげてキスマークを消すようにキスをする。
ともだちにシェアしよう!