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強さ 6話
「マコちゃん来てくれてありがとうね」
yoshiはマコトに微笑む。
「どう致しまして。yoshi君ご飯食べてないでしょ?お粥作ってあげるね」
「マコちゃん」
部屋を出て行こうとするマコトをyoshiは呼び止めた。
「何?」
「まだ食べたくないからいいよ。それよりさ何か話しよ?」
ニコッと笑う彼だけど、寂しいのだろうとマコトは感じて2つ返事でyoshiの側に来た。
「yoshi君が小さいなら昔みたいに絵本読んであげるのになあ」
「あー、覚えてる。なんだっけ?良く読んでくれた絵本。猫が出てくるやつ」
「長靴をはいた猫?」
「違う、なんだっけ?トラ猫でさ……えっと、」
yoshiは絵本の事を思い出そうとして頭が痛くなり、急に黙った。
「yoshi君?どうしたの?」
急に黙り込むyoshiを心配してマコトは顔を覗き込む。
元々、色白な彼の肌が青白くなり顔をしかめている。
「yoshi君具合悪くなったの?大丈夫?」
額に手をあてるマコト。
「大丈夫。ちょっと目眩しただけ」
無理やり笑顔を作って嘘をついた。
「熱上がっちゃったかも。氷持ってくるね。後、水も」
マコトが急いで部屋を出て行く。
その後ろ姿を見ながらyoshiはどうしようもなく不安に襲われる。
何で?
凄く怖い。
俺…………マコちゃん小さい時から知ってるのは何で?
日本に小さい時居たのは聞いて知ってるけど。
記憶が鮮明にある。
公園で遊んだり、遊園地とか、水遊びとか、花火とか、 そうだ絵本も。
何時も誰かの代わりにマコちゃんが側に居た。
『もう、マコちゃん大好きよね嘉樹は。マコちゃんがパパみたいね』
ふと過ぎる母親の声。
あ、お母さんと友達だった?
『嘉樹』
遠くで誰か呼んでて、 男の人。
なおくらいの若い男の人。
誰だっけ?
思い出したくない。 だって怖い。
yoshiは頭を何度も振った。
ピンポーンッ
チャイムの音に何故がホッとした。
タケルかなあ?忘れ物でもした?
あ、いってらっしゃいのチュウとか?
yoshiは気を紛らわせる為にワザとふざけた事を考えていた。
******
光一の留守番を聞いてみる。
……………
やはり、思ったような内容。
豊川はとりあえず光一に掛け直すと何と2コールで出た。 何時もは留守番ギリギリで取るか掛け直してくるか、なのに。
雪だな、こりゃ。
「光一、どこ居るんだ?」
「お前の部屋の前」
「……………………………ストーカーかお前」
ボソッと呟く豊川。
「うるせーっ!お前、嘉樹が具合悪いのを何で俺に言わないんだ」
カチンと来て大声で怒鳴る。
「言ったら仕事サボって来そうだからな、って……もう遅いか」
豊川はヤレヤレとため息をつく。
「ため息なんかつくなよ!嘉樹は俺の息子だ!文句あるか?」
鼻息も荒く言い返す光一に、
「ないよ。でも、仕事は穴開けるなよ?父親の威厳は保て」
と真面目に返され闘争心が打ち消された。
「……ああっ、もちろん」
なんて素直に返してしまった光一。
「それから……」
と豊川に今のyoshiの状況も聞いた。
******
チャイムを押すとマコトの声。
中に入れて貰う。
「コウちゃん仕事は?」
案の定、マコトにも言われた。
「ちゃんと行くよ」
「なら良いけど」
そんな二人の会話はyoshiにも聞こえており、 なんだよーっ!タケルじゃないのかーっ!
とyoshiをガッカリさせた。
寝室に顔を出す光一。
ちぇ、マジでコイツかよ。と何故かムッとする。
そんなyoshiの気持ちを全く読み取れない光一はベッド側まで来た。
「何しに来たんだよ?」
起き上がるのも億劫で身体を横向きにしただけで対応する。
生意気そうに文句を言うyoshiは怠そうで、もしかすると話すのも辛いのかな?なんて光一は感じた。
「見舞いだよ」
そう言ってyoshiの額を触る。
熱い。
「あー、もう触んな!」
と身体を引く。
光一はジーッとyoshiの顔を見た後で頭を撫でた。
「あー、もう!だから触るなって」
と悪態ついて光一が返す攻撃を待つ。
何時もならムキになる光一は直ぐに部屋を出た。
なんか、調子狂うじゃんか!
yoshiはモヤモヤしながら光一が出て行ったドアを見つめた。
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