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強さ 9話
「うん、そうだよね」
yoshiは理解を示してくれるマコトがとても嬉しく思った。
「ねえ、タケルってモテた?……その、付き合ってた人とか」
yoshiは聞きにくそうだったが、知りたそうな顔。
うん、気になるよね?
「タケちゃんは老若男女全てにモテてたなあ。昔っから格好良かったし、コウちゃんと1、2を争ってたよ」
「えっ?タケルはともかく、アイツもモテてたの?」
信じられないという表情。
「コウちゃん、凄くモテてたんだよ?イケメンだったしバレンタインだって沢山チョコ貰ってた」
「えー、ウソだあっ…タケルもいっぱい貰ってたの?」
「タケちゃんの方が多かったな、いつも」
マコトがそう答えると、yoshiは嬉しそうにやっぱりね。と答える。
でも、すぐに、
「やっぱモテてたんだなあタケル…誰かと付き合ってた?」
と、複雑そうな顔。
可愛いなあ……なんて思ってしまう。
「付き合ってたみたいだけど、本気では無かったみたいかな?きっとyoshi君がタケちゃんにとっては本気の付き合いじゃないかな?」
「マコちゃん気を使わなくても良いよ」
とか言いながらyoshiは照れたような顔。
「これは本当!ずっと心配してたもん、どうしてタケちゃんは誰とも付き合わずに独身なんだろうって……きっとさ、yoshi君に出会う為だったんじゃないかな?」
ニコッとyoshiに微笑む。
「ま、マコちゃんってたまに乙女ちっくになるよね」
そんな照れ隠し。
本当は凄く嬉しい。気を使って言った言葉でも、冗談でも。
豊川の最後の人になれるなら、どんなに嬉しいか。
「マコちゃんは好きな人いないの?」
恥ずかしくて話題を変える。
「前はね……居たけどね」
「前は?その人とはどうなったの?」
興味からか聞いてくるyoshiに悪気はないのは分かっているけど、胸が痛くなる。
「その人はね別の人と結婚しちゃったんだ」
そう答えた。
「そっか……まだ好きなの?」
そう聞いてくるyoshiの表情は昔愛した人に良く似ている。
ずっと好きだった。
そして今も…。
もう会えないけど、彼女に良く似た彼が目の前に居る。それだけで良い。
「好きだよ。」
彼女に言えなかった言葉をyoshiを通して伝える。
きっと、告白しても自分は振られただろう。それも知っている。
「そっか。マコちゃんの良さが分からないなんてもったいないよ」
yoshiはどうしてこんなに優しくて温かい人の魅力が伝わらないのか不満になった。
「ふふ、彼女が選んだ人は凄く格好良くてね…彼女と並ぶと美男美女カップルだったから、勝ち目なんてなかったしさ」
それに…君に会えなくなるじゃないか?と心で呟く。
幼いyoshiを可愛がったのは彼女に似てただけじゃない。昔っから憧れてた光一にも似てるから。
大好きな2人の血を引く彼を可愛がらない理由はない。
それに天使みたいに可愛らしい幼かった彼に安らぎも貰った。
「マコちゃん!ダメだよそんな事言ったら、俺は本気でマコちゃんがお父さんだったらなあって思ってたんだから」
「え~、本当に?ありがとう」
嬉しそうに笑うマコトに自分も嬉しくなるが、それと同時に不安が押し寄せてきた。
何故、不安になるのだろう?
何故、怖いと思うのだろう?
わけもわからない不安にyoshiは怯える。
ふいに、ぎゅっと手を握られてマコトを見た。
「yoshi君、ちょっと話過ぎちゃったかな?少し眠ろうか」
優しい口調に不安が少し紛れた。
マコトは話ている途中にyoshiの表情が曇り、手を口元に持って行くのに気付いて、その手を握った。
不安な時などに爪を噛む彼の癖を豊川に聞いていて良かった。
「やだ、まだ話す」
yoshiは首を振る。
「疲れちゃうから…ねっ?」
そう言ってもyoshiは首を振る。
「いや、怖い夢みるから」
不安そうな表情でマコトを見つめてくる。
どんな?なんて聞いて良いのかな?
マコトは躊躇したが、
「どんな夢?」
と聞いた。
話をした方がもしかしたらスッキリして怖い夢なんて見ないかも知れないし、原因さえ分かれば不安を取り除けてあげれるかも知れない。
「どんな……だっけ?わかんない」
yoshiはぎゅっとマコトの手を握る。
「ごめんyoshi君、いいよ、思い出さなくて……じゃあさ、何か映画でも見る?」
頭を撫で落ち着かせる。
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