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強さ 12話
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「yoshi君、もうすぐコウちゃんが戻って来るって」
マコトは電話を切るとそう告げた。
yoshiの気が紛れるものがないかとリビングやら探すものの、何も無い。眠らせるのが一番なのだが眠りたくないと駄々をこねられた。
マコトは昔っからyoshiには甘くて、つい、言われた通りにしてしまう。
レンタルしに行くのは1人にしてしまうし、悩んだあげくに光一に電話してみた。
本当は一緒に居るアキが目的。
マネージャー代理のアキが現場から抜けても支障はない。
でも「今からDVD持って戻るから」と電話があった。
「仕事は?」
「外ロケは終わり、後は夜に残りを撮るから大丈夫」
そう言った光一。
収録に時間が空くのは良くある事。
そんな時は愛人の所へ行ってたのに。
この変わりよう……。
まあ、良い事だからいっかあ。
マコトは嬉しそうに微笑む。
「マコちゃん、何でそんな嬉しそうに笑うんだよ?」
「ん?ちょっと思いだし笑い」
マコトは誤魔化す。
「あ~、そーだ、部屋にテレビ持ち込まないとね。待ってて」
マコトが部屋を出ようとすると「待って、俺がリビング行く」と呼び止める。
「ダメダメ、熱あるんだよ?ベッドで横になってる方が良いって」
「やだ、リビングがいい!」
「だーめ!」
「リビングのソファーはベッドになるからお願い!」
「えっ?そうなの?」
「うん。背もたれ倒せるよ」
「うーん、じゃあ、シーツとか敷いて横になれるようにするから」
と、結局はyoshiに負けてしまった。
「マコちゃん好き、ありがとう」
ニコッと笑うyoshiに、やっぱ甘い自分に笑えるマコト。
「ちゃんと大人しくしてないと病院連れてくからね!」
取って付けたような注意にもyoshiはニコッと笑う。
あー、もう!
のび太を甘やかすドラえも〇になった気分にさえなる。
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豊川は時計をチラリと見る。
昼を過ぎた所。
嘉樹…大丈夫かなあ?
なんて考えてしまう。
「豊川社長」
後ろから声をかけられ振り向く。
「昨日はご迷惑掛けてすみませんでした」
そう言って頭を深々下げる拓海の姿と、その横にはナオの姿もあった。
「いいよ。拓海が無事なら、じゃあ行こうか?」
豊川は2人を促して車を停めている駐車場まで来た。
「すみません、忙しいのを無理言って」
後部座席に座るナオは申し訳なさそうな顔をする。彼はどうしても豊川に話をしたいと電話したのだ。
時間が少し空いていた豊川はyoshiの話もしたいので、今、仕事で来ている場所を伝えて、来るようにと言っいた。
「いや、いいよ。ちょうど午前中の仕事は終わりだったし……それより、拓海はもう平気か?」
ナオの横に座る拓海にチラリと視線を向ける。
「平気。ナオにも全部話したらスッキリしました」
元気な拓海の声が、もうすっかり元気で安心した。
「良かった。でも、偉かったな、ちゃんと話せて」
「はい。……あの、薫さんに凄く感謝してます!」
「はあっ?薫に?」
豊川は凄く嫌な顔。
「怖そうに見えるけど、凄く優しくて……沢山、勇気貰いました。それにあんな高い部屋貸して貰ったし」
拓海はチラリとナオを見て幸せそうに笑う。
夕べは本当に幸せだった。
気持ちを確かめ合い、本当に愛し合えた幸福感。
「薫の持ち物だからなアレは」
危うくソコに連れ込まれそうだった事を思い出した。
「薫の話はいいから、ナオの話って何だ?」
豊川は仕切り直す。
ちょっと躊躇ったような空気になり、
「あの、」
と切り出したのは拓海。
「俺、今の事務所を辞めるんです」
豊川は驚きはしなかった。
あんな事があったんだ。無理はない。
「それがいい。私もそうした方が良いんじゃないかと言おうと思ってたから」
「はい。………それで、芸能界は辞めるつもりないので、豊川社長の事務所に移籍させて欲しいんです」
「えっ?」
予測してない言葉に豊川は一瞬、言葉につまる。
「ダメですか?」
怖ず怖ずとしたような確認の言葉。
「……ダメなわけないだろ?でも、他にもデカい事務所あるのに」
一流と呼ばれる事務所は沢山あるのに。
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