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強さ 14話

お姫様抱っことか、タケルだけの特権なのにぃ!何でコイツに! yoshiは嫌な気持ちと恥ずかしさでジタバタと暴れてみたが、リビングのソファーにフワリと降ろされた。 「ここで見るならちゃんと横になってシーツはかけないとダメだからな」 光一はyoshiにシーツをかける。 「薬は?」 「うっさい!てめーは俺の父親か!」 世話を焼いてくる光一に放った文句。 一瞬、光一が寂しそうな顔を見せてyoshiは酷い事言ったのかな?なんて戸惑う。 yoshiの言葉に悪気はない。  光一もそれを知っているから、  「それだけ威勢良いなら大丈夫だな」 と笑って見せた。 何時もの光一に戻ったのでyoshiも「大丈夫なんだよ!いい加減離れろ!暑苦しいだろ!」と文句を言えた。 「で、何借りて来たんだよ?」 「ああ、待ってろ!アキ、映画」 光一はアキを呼ぶ。 呼ばれたアキはマコトと一緒にリビングへ。  アキとマコトは本当はyoshiと光一を2人っきりにしてあげたい気持ちでいた。 喧嘩してるように見えるけど、光一は父親の顔をしていて、yoshiだって本気で嫌がっているようには見えない。 もっと仲良くなって欲しいと2人は願う。 「嘉樹くんが何見たいか分からなかったから俺の趣味だけど良い?」 アキはレンタルしてきた映画をyoshiに見せる。 「あ、コレ見たかったやつだ。ありがとうアキ」 アキが借りた新作DVDをyoshiは手にしてアキに可愛く微笑む。 その顔が可愛くてアキは照れる。 「アキ、調子乗るなよ」 微笑みかけられたアキにちょっとヤキモチを妬く光一。 「光一、うっさい!嫌なら見るなよ」 「見ますーっ!金出したのは俺だからな」 光一はDVDをyoshiの手から取ると再生させた。 映画が始まるとyoshiも大人しく横になったまま見入っている。 大きな瞳をクリクリと動かして真剣な顔したり、クスッと笑ったり、 表情をコロコロ変えるyoshi。 光一は映画よりもyoshiに目が行ってしまう。 こんなに近くで一緒に映画を見れるなんて思っていなかったから。 凄く嬉しい。 ***** 映画はなかなか面白くて2時間あっという間だった。 「面白かったね。」 yoshiは映画を選んでくれたアキに微笑む。  「だよね、借りて良かった」 アキは次のDVDを手にする。 「次は何借りたの?」 yoshiは子供みたいなワクワクした顔でアキに聞く。  「これも話題だったからさ」 アキはタイトルをyoshiに見せている。  「お前ら何か飲むか?」 すっかり会話に入りそびれている光一は立ち上がり、yoshiとアキに視線を向ける。 「俺、水飲みたい」 とyoshi。 「水でいいのか?アキは?」 ちらりとアキを見た光一だったが、アキが口を開こうとした時に、  「アキはやっぱいいや」 とぷいと視線をそらした。 「ちょっと光一さん!」 去って行く光一の後ろ姿に声を掛けるアキ。 「僕が持ってくるよ」 クスクス笑いながらマコトも立ち上がった。 yoshiとアキを残し光一とマコトはキッチンに。 「アキ連れて来て良かった」 冷蔵庫から水が入ったボトルを手に光一はそう言った。 「何?珍しい事言って。雨、降らす気?」 冗談混じりに返すマコト。 「お前なあ~まあ、確かに雨降ればロケ中止になるかなあ」 光一は今までの彼とはどこか違う雰囲気をマコトは感じている。 いつの間に?  ほんの少し前まで大きな子供みたいで、  すぐキレるし、ワガママで………アキなんて良く辞めないな?ってくらいな扱い受けたりしていたのに。  アキにさえ、yoshiと同じような優しさを感じるのだ。  「豊川からさ聞いたんだ。yoshiが辛い記憶を覚えてて……自分のせいで義父が死んだって思ってる」 「うん。辛いね」 マコトも豊川に聞いている。yoshiが怖い夢を見るって言うのは、おそらく事故の夢。 「こんな事を言っても解決なんてしないけどさ、つい考えてしまうんだ。………もし、離婚せずにyoshiが日本に残ってたら辛い思いなんてしなくて済んだかもって」 光一は今にも泣きそうな、 そんな顔をしている。  yoshiに会って思う事は、手放してしまった後悔。

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