194 / 275

存在

マコトに話せて良かった。なんて思ってしまった。 飲み物を手にマコトと戻るとyoshiとアキは次の映画を見ている。 「何だよ~俺を待てよ」 光一はわざと拗ねたような口調でそう言いながら2人にそれぞれ飲み物を渡す。 「自分が戻るのが遅いからだろ」 yoshiは起き上がって水が入ったペットボトルを受け取る。 起き上がらないと水は飲めないから仕方ないのだけど光一は少しでも身体の負担にならないようにとyoshiの横に座った。 寄りかかるモノがないから自分に寄りかかるようにと思ったのだけど「ちょ、何座ってんだよ!見えないじゃん」と叱られて渋々、フローリングに座った。 「光一、近い!」 すぐ近くに座られ嫌がられるが「うっせえ、字幕スーパー見えないんだよ」と文句を返す。 「老眼?」 嫌みっぽい口調のyoshiにムッとする光一。 「俺は元々目悪いんだよ!乱視入ってるし!メガネは車の中」 「はいはい。そう言う事にしとくよ。だいたい、英語くらい字幕なしで理解しろよ。たけ…豊川さんはペラペラだぞ?」 危うくタケルと言いそうになるのを誤魔化す。 「豊川は留学してたんだよ」 「負け惜しみ」 ニヤリと笑うyoshi。 「お、俺だってその気なれば話せるようになるさ。」 ムキになる光一。 「頭老化してんのに大丈夫かよ?」 クスクス笑うyoshi。 「何だよ~バカにすんなよ!俺だってやれば出来るんだよ!何なら嘉樹が俺に教えてくれたら実証出来るだろ」 売り言葉に買い言葉。 咄嗟に出た言葉だった。鼻で笑われるだろうと思ってたのに「良いよ」とアッサリ返って来た。 へ? yoshiの返事に一瞬、頭が真っ白になった。 「教えてやるよ。やれば出来るんならね」 ニヤリと笑うyoshi。 「いいのか?」 もう一度確認。 冗談とかじゃないよな? 「だから良いって言ってんだろ?」 余りにもアッサリ過ぎて光一は嬉しさよりも先に驚きが来てしまい、上手く言葉を使えない。 人は本当に驚くと言葉がスラスラ出て来ないもんだと再確認。 徐々に嬉しさが込み上げてニヤニヤしてしまう光一。  もちろんyoshiに「キモいんだけど?」何て気持ち悪がられたが気にならない。 一歩進めた気がしたから。 「あっ」 yoshiは画面に目を向けて声を上げる。 「急にどうした?」 光一も画面に目を向けた。 「このロケ地、昔良くキャンプに行ってた場所だ」 そう言って食い入るように画面を見るyoshiは懐かしそうで、それと同時に寂しそうな表情も見せた。 「へえ、やっぱ向こうの人ってキャンプ好きなんだね」 とアキ。 「うん。夏休みとか家族で行くよ。小さい時は本当に楽しみでさ、凄い楽しかったなあ」 「俺も学校の行事で行った事あるけど確かに楽しかったなあ。川で魚釣ったり、夜は星みたりしてさ」 「寝転がって星見るのって良いよね。なんか宇宙に浮いてるみたいな感覚になるからさ。お父…あ、父親がかなり星マニアでさ天体望遠鏡も持参して行くから一晩中星見てた」 「じゃあ嘉樹くんも詳しい?」 「少しはね。でも、ここは星見えないからなあ。周りが明るすぎて……また、見たいなあ」 yoshiは目を伏せたる凄く寂しそうに。 「今度…行こう」 そんな寂しそうな顔されたら星を見せたくなるじゃないかと光一はそう切り出す。 光一の言葉でyoshiは視線を上げる。 「俺の田舎。豊川やマコトが育った所は凄く星が綺麗でさ、夏は良く星を見てたんだ」 「へえ?そうなの?」 yoshiはマコトを見る。 「うん。空気が澄んでるから星が近くに見えるんだ。」 マコトはニコッとyoshiに微笑む。 豊川も育った場所。  もちろん見たいに決まっているし、興味もある。 「行きたい……かも」 yoshiは控え目な言葉を発した。 豊川も光一もマコトも忙しいのを知っているから。 きっと、行けないままで終わる。そう思うから。 「そっか、行きたいか。じゃあ、スケジュール見て豊川とかと相談するよ」 光一は凄く嬉しそうな顔を見せていて、yoshiはつい「あまり無理すんなよ、どうせまた行けないんだから」と口にした。 

ともだちにシェアしよう!