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存在 9話
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「まだ帰んないのかよ?」
不服そうな表情のyoshi。
時間はもう直ぐ20時。
光一の願い通りに雨になり夕方からのロケが中止になって、ずっと豊川のマンションに居座っているのだ。
アキは夕方に事務所に戻って行った。
その時に光一も帰ると思ったのにずっと居る。
「まさか泊まる気?」
yoshiは全く帰る素振りを見せない光一に嫌そうに聞く。
「あ~、そうしようかな?」
yoshiの帰れよアピールに気付きもせずに光一はそんな返事を返す。
冗談じゃない!
タケルとイチャイチャ出来ないじゃないか!
yoshiはムッとした顔になり「帰れよ」と無愛想に言う。
「豊川戻るまでは居るよ」
「何で?」
「お前が心配だから」
「は?心配なんてしなくて良いから帰れよ、俺より自分の息子を心配しろよ」
ズキンとくるyoshiの言葉。
嘉樹も大事な息子だと言葉にしたい。
でも、出来ない切なさで一瞬、悲しそうな表情になる光一。
「何だよ、だってそうだろ?まだ8時なんだから智也とかと遊んでやれるだろ?あと、拓也だっけ?お年頃の息子と語れる時間自分で作れよ。時間は自分で作るもんだろ?」
もちろんyoshiには悪気なんてないし、智也達を心配してくれる優しさも持っていてくれるyoshiに嬉しく思う。
でも、胸の痛みは痛さを増すばかりだ。
「yoshiくん、夜ご飯何食べたい?」
微妙な空気を壊したくてマコトは会話を遮る。
「たけ、…豊川さん帰るまで待つからまだ良い」
「たけちゃん遅くなりそうだよ?」
「いいの!待つ」
yoshiはそう言い切った。
豊川に随分懐いているんだな、なんて光一は複雑な思いを抱えてyoshiを見ている。
豊川の名前を口にする時のyoshiは何だか幸せそうな顔で、豊川にヤキモチを妬きそうになる自分がいた。
「豊川戻るまで居るからな」
一言嫌みを言いたくなり、光一は居座る決心を口にする。
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豊川はyoshiが心配でたまらなくて仕事を早めに切り上げた。
お土産買おうか?
熱は下がったかな?
夕飯はちゃんと食べたのだろうか?
気付くとyoshiの事ばかり考えていた。
誰かが部屋で待っててくれる。こんなに嬉しい事だとは思わなかった。
去年の今頃はどうしてたっけ?
yoshiが居なかった前の事など忘れてしまうくらいに充実している。
自分の部屋の鍵を出して自分で開けようと思ったが、 ああ、開けてもらうのも良いなあって、チャイムを鳴らした。
数秒して開けられたドアから顔を覗かせたのは愛しいyoshiではなく、 光一だった。
チッ、 つい出た舌打ち。
「お前なあ~ただいまもなく舌打ちかよ」
光一はムッとした顔。
「お前、帰ったんじゃないのか?」
「うるせえ、今から帰るとこだったんだよ!」
確かに光一は上着を着て荷物を持っていた。
嫌がらせに残ってやろうと思っていたのだが、 yoshiに智也と風呂に入ってやれだの、遊んでやれだの、ずっと言われ続けて根負けして帰る事にしたのだ。
タイミング良く豊川が帰って来ただけ。
「じゃあ、どうぞ」
豊川はドアを全開させ光一を促す。
くそう!
光一はムッとしながら豊川に近付く。
「フンだ、豊川の馬鹿やろう」
子供みたいな捨て台詞。
「光一」
「何だよ」
「子供か?」
呆れたような豊川の顔。
「嘉樹、熱下がったぞ」
光一はそう言って豊川の横を通り過ぎた。
「そっか、良かった」
豊川はホッとした顔を見せる。
「嘉樹は何でお前にあんなに懐いてんだろ?マコトなら何となく分かるけどさ。」
嫌みの一つでも言うつもりが思いつかない。
その代わり、羨ましい気持ちを言葉にしてしまった。
「お前、本当にヤキモチ妬きだよな」
豊川はつい笑った。
「うるせえ。じゃーな」
光一は手を振り歩き出す。
「嘉樹にいつでも会いに来れば良いだろ?でも、泊まりは断るけどな」
後ろ姿に声をかける。
「うるせえ、言われなくても来てやるよ」
振り返りもせずに返事を返して光一は帰って行った。
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