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記憶 4話
まだ成人に成りきっていない彼の腕は優しくて温かい。まだ子供なのに…充分過ぎるくらいな豊川を慰める仕草。
頭を撫でるyoshi。
そんな優しい彼に、「ありがとう」とお礼を言う。
「寂しくなかった?」
頭を撫でながら聞いてくるyoshi。
「寂しいよ今も…嘉樹を紹介出来ないのが凄く寂しい」
豊川は顔を上げてyoshiを見上げた。
「どんな両親だったの?優しかった?」
「優しくて強い人達だったよ。愛情に溢れてて、光一やマコトも自分の子供みたいに可愛がってた」
「えっ?まこちゃんとか光一も?」
yoshiは想像したのか少し笑った。
「光一なんて毎日居たよ。宿題写させろだの、うるさかった」
「あはは、想像出来る」
「…だろ?アイツ昔っからいい加減な奴。でも、必死に笑ってた。辛いクセに」
その言葉の意味は少し理解出来た、豊川が前に言ってた事。
光一と両親が上手くいっていなかった事だ。
「毎日痣作ってたよ。私から見ても光一の両親は親の資格なんてないような人間だったから。」
yoshiは言葉を返せずに黙り込む。光一の辛い気持ちは自分にも分かるから。
本来守ってくれるはずの大人から殴られる痛みを知っている。
あんな裏切りはない。
「私の両親は血の繋がりなんて全くない私に愛情をたくさんくれたのに、光一の両親は自分と血を分けた子供を殴る……本当に理不尽だよな」
「えっ?」
サラリと言葉にした豊川の台詞にyoshiは聞き間違いじゃないかと思った。
「私の両親はね子供が出来なかったんだ。でも、どうしても子供が欲しくて養護施設に訪れて、そこで1歳になったばかりの私と出会ったらしい」
そう言ってyoshiを見上げる豊川は見たことがない切なそうな顔をしている。
「タケルは……いつ知ったの?」
恐る恐る言葉にした。
「子供の頃に……交通事故に遭ってね。その時に血液型が両親と違う事に気付いたんだよ。私は気付かない振りをし続けたよ。血が繋がってなくても愛してくれているのを知っていたし、だから何だ?って思ったしね……で、高校を卒業する時に打ち明けられた」
「……タケルの本当の両親は?」
「若くて私を生んだらしくてね。手放したらしい」
そう答えたらyoshiはポロポロと涙を流した。
「嘉樹っ、」
豊川は両手で彼の涙を包むように頬に触れる。
「何で嘉樹が泣くんだ?」
「…タケルは許せる?」
「えっ?」
「自分を捨てた本当の親を」
興奮したみたいに熱い頬にポロポロ零れ落ちる涙。
きっとyoshiの心の奥に沈み込まされた記憶がそう言わせているのかも知れない。
自分とyoshiの境遇は似ている。
「許すも許さないも、顔も知らない相手だし……私は愛してくれた彼等が居たから考えた事無かったよ」
その答えを黙って聞くyoshiは何を思っているのだろうか?
「それに今頃後悔しているかも知れないしさ」
yoshiと過ごす内に後悔していく光一のように、毎日、毎日、何かを反省して変わって来ている。
「俺は……」
涙声のyoshiは豊川を見つめて言葉を濁す。
「うん?どうした?」
優しい声で聞くと、
「俺は許さない、絶対に」
yoshiはそう言って豊川にしがみつく。
声を殺して泣くクセ。あの頃のまま。
「嘉樹、声を殺して泣くなって言ってるだろ?泣き止むまで私は側に居るんだから」
豊川はyoshiの頭を撫でる。
ぐすぐすと鼻を啜る音だけ。
豊川は安心するようにずっとyoshiの名前を呼びながら頭を撫でる。
こうやってたら幼いyoshiは腕の中で眠っていた。
それを思い出す。
yoshiは光一を許していないのだろうか?
幼い日、必死に光一を目で追っていた彼。光一が大好きだと身体全体で言っていたのに。
*******
光一は時間を確認する。
朝6時。
今日のスケジュールってどうだったかな?とベッドから起き上がると、
「おはよう。お父さん」
と智也の声がした。
「おはよう、ごめん起こしたな」
夕べ一緒に寝たのだが、女を抱いて寝るよりはゆっくりと眠れた気がして智也に微笑む。
そして、
yoshiと一緒に寝た事あったかな?なんて考えてしまった。
無い。
一緒に眠るなんて簡単なのにな。
光一は智也とyoshiを重ねてしまい、つい、頭を撫でる。
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