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記憶 11話
「あ、俺は飯食ってきた…」
光一は遠慮する。
「そうですか、じゃあ、何か飲み物用意しますね。マコトさんは食べてきました?」
「えっ?あ、まだ」
拓海に聞かれてそう答えた。
「マコちゃん、一緒食べよう」
yoshiに促されてテーブルに着く。
****
「ねえ、2人で作ったの?」
出された朝食を食べながら拓海を見るyoshi。
「あ~ナオがだいたい…作ったかな?」
えへっと可愛く笑う拓海。
「やっぱね、ナオの味だもん」
yoshiは拓海の横に座りニコニコと2人の会話を見ているナオを見た。
「拓海も手伝ってくれたんだよ。」
「ちぇ、やっぱ嘉樹は味分かっちゃうんだ」
どれをナオが作ったかyoshiは当てていく。
「そりゃあ分かるよ、ナオのご飯ずっと食べてるし」
「ナオっていつから家事してんの?どれもプロ級」
「僕は亡くなった両親がねレストランを経営してて、2人に料理を教わったんだ。それで亡くなった後はずっと作ってたよ。兄が忙しかったから。で、兄が結婚してからは嘉樹の母親が作ってくれるようになって、でもたまに作ったりしたな。」
拓海の質問に懐かしそうな顔をする。
「ナオの作る料理の方が美味しかったりするんだよ、母もナオには負けるって言ってた」
yoshiも懐かしそうに微笑む。
「だから俺の作る料理の殆どはナオの味だったりする。拓海も教えてもらいなよ。ずっと一緒に住むんだからさ」
「そっかあ、じゃあ俺も習おうっと、よろしくお願いしま~す」
拓海は頭を下げる。
「いいよ、教えてあげる」
クスクス笑うナオ。
そうか、嘉樹の思い出の味はナオかぁ……。
会話を聞きながら光一はナオを羨ましく思えた。あんな風に美味しかったって話してくれるように色々としてあげてたら…後悔はそれだけyoshiを好きな証拠………そんな言葉が浮かぶ。
あ、弁当…出しそびれたなあ。
ま、いっか現場で自分で食べよう。
小さなため息が出てしまった。
*******
「嘉樹、全部持って行くのか?」
朝食を終え、yoshi達は引っ越しの準備をしている。
「全部はちょっと、服とか……後は」
豊川に聞かれてyoshiは必要な物を一カ所に集めていく。
「嘉樹、ダンボール」
拓海が折りたたんだダンボール箱を部屋に持って来た。
「ありがとう」
素直に受け取り組み立てる。
拓海もさり気なく手伝ってくれていて、いつの間にか仲良くなっているのを光一は離れた場所で見ていた。
仲良くしてくれる友人みたいで良かった。って、本当に思う。
日本に来たのはつい最近なら友人だって少ないだろうし、幼い時に住んでたとしても記憶なんて殆どないに近い。
アメリカの生活とこっちの生活は違う。
自分が助けてあげたい。そう思うけど、何となく疎外感を感じる。
さり気なく手伝うマコトや、豊川はyoshiが頼り切っているし、 保護者をしてくれていたナオと、友人みたいな関係になってくれた拓海。
こんな事思うのはお門違いだと充分と分かってるけど、俺は要らないかな?とか。
あー、もう!そんなマイナス思考だから嘉樹に相手にされないんだ!
頭をブンブン振って気を取り直す。
決めたじゃないか。思い出して貰えなくても嘉樹を守るって!
「光一さん」
ナオに呼ばれて、顔を上げた。
「今日は元気ないですね」
「えっ?そおかあ?」
笑ってみせる。
「はい。元気ないです。良かったらこっちで休みません?」
ナオに手招きされる。
「でも、」
ちらっと荷物整理しているyoshi達に目を向ける。
「あれだけ人数居れば終わりますし、yoshiの荷物そんなに無いんです。アメリカからあまり持ち込んでないから」
「そうなのか?」
「前に老夫婦と暮らしてたと言ったでしょ?彼らが全部持って行かないで欲しいって…帰って来て欲しい意味を込めて荷物を置いて行って欲しいと頼まれて」
「そうなんですか?…可愛がって貰ってたんですね」
「はい。嘉樹は…本当に可愛くて良い子ですから」
ナオは優しく微笑む。
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