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記憶 14話

***** 泣きすぎて目元が熱い。 濡らしたハンカチを持参してきたので目元にあて、座席を倒した。 泣いてる姿をyoshiに見られたくなくてファイルを手に車に戻って来た光一。 コンコンッ、ガラス窓を叩かれ、ちょっと驚く。  まさかyoshi? ハンカチを少しずらして窓を見るとマコトが居た。 ガッカリしたが同時にホッとした。泣き顔見せれない。 ハンカチを目に置いて座席に寝たまま窓ガラスを下ろす。 「コウちゃん大丈夫?急に居なくなるからさ、ナオくんに車に戻ったって聞いてさ………頭痛いの?」 ハンカチの隙間から見えるマコトは心配そうで「いんや泣きすぎて」と素直に答えた。 「えっ?」 きょとんとなるマコト。 ******* 「うわっ、目めっちゃ腫れてるよ」 助手席に座るマコトの前でハンカチを取って見せる。 理由をちゃんとマコトに話した。 マコトの膝の上にあるファイル。 「中、見ていい?」 と言われて光一は頷く。 パラパラとページがめくられていく度にまたジワッと涙が溢れてくる。 「ほんと………凄いね。こんなにたくさん、集めるの大変だっただろうにね」 マコトの目にもジワリと涙が溜まっている。  マコトも想像しているのかも知れない、小さな手に必死で貯めたお小遣いを握り本屋で記事を探している幼い彼の姿を。 「こんな小さな記事まで、……えっ?こんな記事知らないよ」 マコトはページをめくりながら食い入るように見ていく。 雑誌に載った事なんて、記憶の中薄れていたのに、何を聞かれ、何を話したか、なんて覚えていない。 そんな記事まで取ってあるのだ。 「コウちゃん……ほらね、yoshiくんはコウちゃんが大好きなんだよ。今は悲しい事故で記憶がないけど、こんなに好きで居てくれたんだよ」 マコトに言われて光一は頷く。 「良かったねコウちゃん」 「うん」 「ライブ見に来てくれてたんだね」 「うん」 ライブチケットのページを見つめる。 「そっか……見に来てくれてたんだ。嬉しいなあ」 マコトはそのページを指でなぞる。 格好いい姿を見せれただろうか? 彼はどんな気持ちでライブを……自分を見てくれてたのかな? 「会いに来てくれたら良かったのになあ」 マコトの呟きに自分も会いたかったと思うが、どんな態度を取ったのか想像したら怖くなる。 今は、後悔ばかりして反省もしているけど、6年前に会っていたら、優しい言葉を掛けれたかな? 嘉樹だと気付いてあげれたかな?彼を傷つける言葉を言ったかも知れない。 今なら、優しい言葉を選べる。 「yoshiくん可愛いね。」 「うん」 「コウちゃん、もういじけちゃダメだよ?こんなに愛してくれてる証があるんだもん。過去よりも今、今よりも未来!でしょ?」 マコトに微笑まれて、頷く。そうだと思った。 愛してくれてたなら応えなきゃ、幼い手を離した事を後悔しても遅いのだから、だったら、今の彼の手を握ってやれば良い。  「コウちゃん、ほんと泣き虫だよね。そこは変わらない」 マコトに言われ、涙をゴシゴシと服で拭うけど、涙は止まらない。 「がんばれお父さん」 光一はウンウンと頷く。 こんなに泣いたのはどれくらいぶりだろうか? 涙がちゃんとある自分に安心した。 **** 「あれ?マコちゃんは?それに光一も」 yoshiはマコトと光一が居ない事に気付く。 「光一さんなら車だよ」 「えっ?なんで?」 ナオの言葉にyoshiはドキッとした。泣きそうな顔をした光一を思い出す。 「ちょっと様子見てくる」 思った以上に傷つけたかも知れないと良心が痛む。 「yoshi、待って」 車に光一が居る理由を知っているナオは慌ててyoshiを止める。 「なに?」 「なんか、用事思い出したって」 「用事?」 「だからさ、待ってようよ」 なんか様子が変なナオに不思議そうに顔を見る。 ガチャ、 玄関のドアが開く音がしてyoshiは光一かと、玄関へ急ぐ。 「マコちゃん、あれ?1人?」 玄関に居たのはマコトだけで光一の姿はない。 「コウちゃんは仕事」 「えっ?13時からって」 時間はまだ早いのでyoshiは不安になる。

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