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記憶 15話
普段と同じように生意気な態度だと思ったのに、予想以上に傷つけたのかも知れない。
だって、元気無かった。何時もはウルサいくらいなのに、食事の時もその後も光一は何も話して来なかったのだ。
「なんか、仕事が早まったって」
「本当に?」
不安げな顔でマコトを見ているyoshiを見て嬉しくなった。
光一を気にしている。凄く、凄く、嬉しい。
「本当だよ。ね、荷物もう詰めちゃった?」
ニコッと笑うマコトは嘘付いていないみたいでyoshiは安心した。
「うん。後は車に乗せるだけ」
「あっ、全部乗るかな?車が1台になっちゃったもんね」
マコトは部屋へと進んで行く。
「1台?光一はどうした?」
ダンボールを抱えた豊川が二階から降りて来た。
「仕事が早まったんだって」
マコトの代わりにyoshiが答えた。
「マジか~」
「乗るよ」
yoshiはダンボールを豊川の手から貰おうとするが、大丈夫だと拒否された。
トランクにギリギリ収まって豊川はホッとする。
「ねえ、光一…本当に仕事かな?」
トランクを閉めた豊川に不安そうな顔で聞く。
「どうして、そう思う?」
「だってアイツ、元気無かったから」
「気になる?」
コクンッと頷くyoshiの頭を撫でると、
「じゃあ、電話してみるか?光一に掛けてやる」
豊川は携帯出すと光一に電話をする。
「えっ?何話せば?」
ちょっとうろたえたようなyoshiに豊川は微笑むと、ニコッと笑って、
「何時もと同じでいいよ」
安心させた。
3コール目で電話に出た光一に、「今、話せるか?」と確認した。
「豊川…ごめん、手伝わないで」
少し鼻にかかった声が気になった。風邪引いてたっけ?
「それは良いけど、話せるのなら…ちょっと話したいって子と代わるから」
「えっ?誰?」
と個人を特定していると耳に聞こえて来た声は、
「もしもし、…光一?」
yoshiだった。
ドクンと鼓動が一気に高鳴る。
嘉樹…… ファイルを前にようやく止まりかけた涙がまたジワリと襲って来た。
「うんっ」
何時もみたいにガンガン行きたいのに、そっけない二言しか出て来ない。
「あのさ、その……元気かな?って思って」
yoshiも何時もと雰囲気が違う。喧嘩越しの生意気な彼じゃなくしおらしい。
「元気って?」
何だか今の心を読まれているんじゃないかと思った。
「だって、元気無かったじゃん」
罰が悪そうな声。
ああ、もしかしてマンションで言い合った事を気にして……、じわっと涙が溢れてくる。
なんで、 なんで、この子はこんなにも優しいのだろう?
喉の奧が熱くなり、危うく嗚咽をあげそうになり我慢する。
「光一、やっぱ…傷つけた?その………ごめん」
ごめん……ごめんなんて言うなよ。
嘉樹は謝る必要ないだろ?謝らなきゃいけないのは自分。
「光一、何とか言えよ。調子狂うんだよ、アンタが元気じゃないとさ、何時もみたいにムキになってくんないと……調子狂うんだよ」
言葉にしたら泣いてしまう。
でも、黙ったままじゃ心配させてしまう。
「ごめん…」
震えてしまいそうになる声を必死に押さえようやく出た言葉。
「ちょ、何で謝ってんだよ!」
慌てるyoshiの姿が想像出来て可愛く思えた。
「うん、ごめん」
本当にごめん。
寂しい思いをさせてごめん。
1人ぼっちにしてごめん。
今すぐ謝れたら…
「………なあ、もしかして泣いてる?」
ドキンっとした。
「えっ?なんで?」
懸命に普通を装うってしても、yoshiの優しい気持ちを知ってしまった今は普通になんて出来ない。
「なんか、そんな気がして」
「もしかして鼻声だからか?悪い、なんか風邪っぽい」
「えっ?俺がうつしたのかな?」
「あはは、アキだよ、アイツ風邪引いてたから」
流れてくる涙を拭いながら声を高めに話してみる。
泣いてると悟られないように。
「アキかあ~大丈夫かな?」
「アイツの心配しなくて良い!」
「ひでえーマネージャーなのに」
クスッと笑った感じがして光一はホッとした。
「あとさ…」
「ん?」
「また映画借りて来いよ」
yoshiの言葉に涙は止まらなくなった。
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