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記憶 17話
「タケちゃん、運転するから後ろにyoshi君と乗って」
マコトは運転席から豊川を出した。
理由は豊川にも分かる、yoshiが泣いているから。
豊川とマコトはナオと拓海に挨拶をし、車を走らせる。
後部座席ではyoshiが豊川にしっかりと抱きしめられていて、マコトは後ろを見ないように気を使う。
寂しいよね?
マコトも豊川もその寂しさの理由を知っている。田舎から都会へ出る時に似たような寂しさを感じた。
田舎に家族や友人を残してきた。
新しい友人や街に慣れるまで寂しさを感じていたのを思い出す。特にyoshiは父親と別れ、母親に虐待されていた中でずっと支えてくれていたナオと離れて暮らすのだから。
例え会える距離でも、連絡を取れる手段が色々あっても生活そのものが変わった。
互いに違う相手と暮らす事を選んだ寂しさ。
豊川にしっかりとしがみつくyoshiは小さい子供みたいだ。
背中に回した手をあやすようにポンポンと軽く叩く。
******
「光一さん、大丈夫ですか?」
仕事先、アキは光一に目元を冷やすシートを渡す。
「わりぃ」
「今日はラジオだけだから顔出さないんで大丈夫ですよ」
アキは光一の腫れた目について何も聞いて来ない、何か察してくれているのだろう。
「まだ時間あるんで何か食べます?」
「弁当あるからいい」
目元を冷やしながら光一は答える。
「買ってきたんですか?」
「いんや作った」
「えっ?光一さんが?嘉樹くんじゃなくて?」
「俺だって、作るし」
「へえ~どこにあるんですか?」
そう聞かれて、 あれ?と思った。
俺、どうしたっけ?
豊川のマンションから持ち出したのは覚えている。
その後はどうした?
「光一さん?」
「どこだろ?」
「は?」
アキは怪訝そうな顔をする。
*******
頭を撫でられるの好き。
愛されてる実感があるから。大きなあの手が好きだった。
めったに撫でられる事はなかったけど、でも、撫でられる時は凄く嬉しくて、温かい手が大好きだった。
甘い匂いに目をゆっくり開けた。
視界に飛び込んで来たのは何時もの優しい豊川の胸。感じるのは抱きしめられている腕と温もり。
どうしたんだっけ?とyoshiは考えた。
荷物取りに行って、直と離れるのが急に寂しくなって、泣いてしまったんだと思い出した。
そっか、車の中で寝ちゃったんだ俺。
今はベッドの上だ。
豊川は泣き止むまでずっと抱きしめてくれてたんだと、yoshiは嬉しくて豊川にぎゅっと抱きつく。
すると、頭を撫でなれた。
「お腹すいた…」
yoshiは顔を上げて豊川を見た。
豊川は優しく微笑んで「何か食べるか?」と聞いてきた。
「タケル」
「……それは夜までお預けだな」
「えー、やだ」
「マコト居るし」
「あっ、」
「だからお預け。」
豊川は起き上がり、yoshiを見下ろす。
少し瞳が腫れている彼の頬を撫でる。
泣き虫でまだ幼さを残す彼を守っていくのは自分だと確認するように触れた。
ずっと、ずっと、守っていきたい。
「タケル、泣いてごめんね」
yoshiは見上げて豊川を見つめる。
「可愛いから許す」
「何だよソレ」
クスクス笑うyoshi。泣いた顔よりも笑った顔がやはり良い。
「いいだよ、私の前では泣き虫でかまわないんだ。どんな嘉樹も可愛くてたまらないから」
「なんかエロい」
そのセリフに豊川は思わず笑い「あ~、泣いて嫌がる嘉樹を無理やり抱いてみたいかもな」とジョークで答える。
「…マジ、エロいから」
呆れながらも笑うyoshi。
「マコトが荷物整理してるから、手伝いしないとな」
「うん……起こして」
両手を伸ばすyoshiを抱き抱えて起こす。
「タケル…ありがとう」
耳元で囁くとyoshiはベッドから降りた。
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